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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第46章         

 ヴィヴィの頭の中に、ちょうど1年前にジャンナが言った言葉が蘇る。




 「『自分の幸せよりも、愛する人の幸せを考えて身を引くジゼル』が、

  『これからのヴィヴィ』には合うのじゃないかって――」



 
 ジャンナはそう進むべき道を示してくれていたのに、結局ヴィヴィが選んだのは、ジゼルとは対極にいる『サロメ』――自分を受け入れない男を力ずくで手に入れた少女、だった。

「………………」

 ヴィヴィが足の上においていた掌にぐっと力を込める。

(あの時、もし『サロメ』ではなく『ジゼル』を選んでいたら……、今の自分みたいには、ならなかった――?)

「やめなさい」

 ヴィヴィの思考を、ジャンナの鋭い声がぶった切る。

「……え……?」

 いきなり叱咤されたヴィヴィは、顔をあげて呆気にとられたようにジャンナを見返す。

「『やらずに後悔するより、やって後悔するほうがいい』 そう決めたのは、自分自身でしょう。甘ったれたこと言考えている時間があるなら、これから自分に出来ることを考えなさい。傷ついたのはヴィヴィ、貴方だけではない筈よ――?」

「……――っ」

 まるでヴィヴィの考えていることなど手に取るように解るとでもいう風に、ジャンナは真っ直ぐにヴィヴィを見据え、厳しく叱責した。

 そしてその言葉は、ヴィヴィの心の奥底まで瞬時に貫く。

「………………」

 黙り込んだヴィヴィは、ジャンナの視線が真っ直ぐ過ぎて、逃げるように視線を落とす。

(朝比奈が言っていた。私がお兄ちゃんに首を絞められた翌朝、寝室に寝かされていた私が「まるで死人を弔っているようだった」って――。お兄ちゃんは、私がしたことで心から傷つき、また私に手をかけてしまったことで二重に苦しんでいる。私が死んだものと思わずにはいられないほど……、なのに私は、本当に自分のことばかり……)

 ぐっと強く瞼を閉じて俯いたヴィヴィに対し、向かいのジャンナから小さな嘆息が落ちる。

「ヴィヴィ……。私はプログラムを創る時、基本的にはスケーターのその時の思いに近いプログラムを創るの。とても心が入るからね。けれど――」

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