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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第46章
こちらも好評を得たが、あまりに笑いすぎてギブアップした皆に止められ、ヴィヴィはすごすごとソファーに戻った。
「クリスは『デジレ王子』だったの。みんなにキャーキャー言われてた。リアル王子だって」
紅茶で喉を潤したヴィヴィは、隣のクリスを見て悪戯っぽく微笑む。
「あ~それも、見たかったわ~」
とジャンナが悔しがると、牧野マネージャーも同意した。そんな二人にヴィヴィが、
「朝比奈に頼めば、たぶん録画データ残ってるはずだよ? ね?」
「もちろんでございます。もうそれは愛らしい王子で。私なんぞは当時、何度も何度も見返して――」
朝比奈がそうすらすらと当時のことを振り返り、うっとりと幸せそうに微笑むのを、
「や、やめて……」
とクリスが止めた。
「クリスの演じた、デジレ王子のヴァリアシオン(ソロの踊り)が一番拍手、多かったの。で、オーロラ姫の子が、ラスト舞台上で悔しがって、わんわん泣いちゃって――」
面白がったヴィヴィが、その後のエピソードを面白おかしく話す。
「あれは……参った……」
当時を思い出したクリスが、困惑した表情をする。
「で、どうなったの?」と先を促すジャンナ。
「ヴィヴィが、カラボスのマントの下にその子を隠して、舞台袖にはけたの」
ヴィヴィが破顔してそう言うと、皆が大爆笑した。
「あはは、それは滑稽だね!」と牧野マネージャー。
「見たい~!! 朝比奈、絶対に動画送ってね?」とジャンナ。
「かしこまりました」と朝比奈。
「ほ、ほんと、やめて……」
ただ一人クリスのみが、困ったようにそう言ったのだった。