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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第46章
約1週間の振り付けを終え、双子はロシアを後にした。
帰りの機中、ヴィヴィは寝るのにも飽きて、自分の衣装のデザインを、レポート用紙に書き込んでいた。
「クリスのFPの衣装は、決定してるもんね?」
目を覚ましたらしいクリスに、そう尋ねる。
「え……?」
クリスがコーヒーに口を付けながら、「何のこと?」と聞いてくる。
「だって、牧神 = 牛さん柄の全身タイツ でしょ!」
ヴィヴィは「牛さん柄は、はずせないよね~」と、胸の前で腕を組んでうんうんと頷く。
「馬鹿、にしてる……?」
クリスがじと目でヴィヴィの事を見つめてくる。
「め、めっそうもない!」
「ホントに……?」
慌てて否定したヴィヴィに、クリスはまだ不信そうだ。
「だってヴィヴィ、『牧神を演じるニジンスキーのスケッチ』、好きだから……」
それは、金色のカツラに牛を連想させる斑模様のタイツを纏い、サンダル姿で岩の上に寝そべり、パンの笛(牧神の象徴)を吹いている絵だった。
「あ……あれは、カッコいいよね……」
クリスも、そこは静かに同意する。
「でしょう? クリス、金髪だし!」
「全身タイツ……か……」
クリスはそうぼそりと呟くと、自分の両足を見つめていた。
そしてやがて頭を抱え、本気で悩み始めたクリスを、ヴィヴィは苦笑して見守っていたのだった。