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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第47章          

 5月中、双子はそれぞれSPを振付師の宮田に振付けてもらい、そして自分のエキシビションは、ヴィヴィはジュリアンと一緒に振付けた。

 そして驚いたことに、自分で振付をするヴィヴィに感化されてか、クリスも自分のエキシビションをジュリアンの助けを借りながら自分で振付けた。その出来はなかなかのもので、宮田に「僕の仕事、無くなるかも……」と冗談めかして突っ込まれていた。

 振付を覚えるだけでも大変だが、双子はTHE ICEのCMや宣伝番組に出たりと、5月を結構忙しく過ごした。

 6月に入り、ヴィヴィはSPとFPを滑り込んでいた。

 SPは振付師宮田の選んでくれた、グリーグ作曲、戯曲『ペール・ギュント』より、山の魔王の宮殿にて。

(曲の長さがちょうどSPの2分50秒だから、曲を切らなくていいのが嬉しい……)

 執拗に同じ主題を繰り返すこの曲を表現するのは容易ではないだろうが、それだけにやりがいもあった。

「問題は……FPか~……」

 ヴィヴィの中で、ジャンナの振付けてくれた眠れる森の美女が、どうもしっくりこない。

 勿論、振り付けは完璧だ。バレエの要素を多分に取り込み、ヴィヴィの魅力全開のプログラムになっている。

 それなのに、何が一体問題なのか――。

「………………」

(基本、オーロラ姫って、ただの『お姫様』でさ……、自分で何もやってないんだよね……)

 フェンスに凭れ掛かったヴィヴィは心の中でそう思いながら、スケート靴のエッジのかかとを、こつこつとリンクに落とす。

(まあ、カラボスに呪いを掛けられて、100年も寝むらされちゃうのは可哀そうだけれど……。寝てるだけで、自分好みの素敵な王子様が現れて? 恋に落ちて? 結婚して? みたいな――)

「はぁ……、何、ヤキモチ、焼いてるんだろ……童話の世界の主人公に……」

 ヴィヴィは心の狭い自分にがっくりと肩を落としながら、再度FPの振り付けを確認し始めた。







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