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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第47章
「ごめん、なさい……ごめんなさい……」
謝ったって、泣いたって、時間は元に戻らないし、匠海も自分を許さない。
解っているのに、もうその言葉しか出てこなかった。
吐き過ぎてフラフラになった体は踏ん張りが利かず、ヴィヴィはがくりと膝を折った。両手を洗面台の淵に掛けて何とか体制を保つ。
「ごめんなさい……お兄……ちゃん……っ」
泣きたくないのに溢れ続ける涙と共に、ヴィヴィはずっとそこにいない匠海に謝り続けた。
『今日、カレンの家にお泊まりする約束してたんだった!
ごめん~、マムには連絡しておくから、
クリス先に帰って~(^‐^)/』
ヴィヴィはクリスにそうメールをすると、朝比奈に「カレンの家に泊まるから、クリスと帰って」と電話をした。
ジュリアンにもそう電話したが、「もっと早くに言いなさいよ!」と散々怒られたが、土曜日でもあったからか結局は折れてくれ、「今日だけだからね? 朝練は参加するように!」と念を押されて、何とか許しを得た。
そしてカレンにも電話を掛ける。
「ゴメン、今から会える?」
『いいけど、どした~?』
「うん、ちょっとね……。どこに行けばいい?」
『ヴィヴィは今、リンクにいるの?』
「うん」
『じゃあ、私近くにいるから、迎えに行くね。15分位で着くと思う』
「分かった。ありがとう」
『See you!』
カレンが到着するのと、クリスが朝比奈と帰宅するのとが、ちょうどかち合った。
「やっほ~、クリスもいるじゃない。一緒に行く?」
運転手に送られてきたカレンが、クリスを見つけてそう誘いをかける。
「え……?」
クリスは不思議そうにカレンとヴィヴィを見返してくるが、
「か、カレン。クリスはいいの!」
と焦ってヴィヴィがカレンを止めると、
「そ?」
とカレンは引き下がってくれた。
「お嬢様がご面倒をおかけすると思いますが、よろしくお願いいたします」
そう言ってカレンに深々と頭を下げた朝比奈に焦りながら、カレンの車に乗せてもらってヴィヴィはリンクを後にした。
「こら。何があったの?」
車の中、開口一番そう言ったカレンに、ヴィヴィは驚く。
「え……?」