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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第47章
「このカレン様を、見くびるでないよ~。両親とでも、喧嘩した?」
カレンはそう言って、ヴィヴィの鼻をむぎゅと摘まむ。
「いたた。喧嘩なんてしてないよ。急に夜のレッスンなくなったから、せっかくの土曜日だし、カレンと遊びたいなって!」
「ホントに~?」
まだカレンは信じられないようで、じ~っとヴィヴィを見つめてくる。
「ホントほんと!」
「じゃあ、付き合って?」と首を傾けるカレン。
「いいけれど、どこに?」
そう言われれば、カレンはお洒落をしているし、この近くにいたということはどこかに出かける途中だったのではないか。
「お買い物~♡」
「わ、行くいく~!」
そう嬉しそうにのってきたヴィヴィに、カレンは微笑む。
「本当に、全部、付き合ってくれるのね?」
「うん。勿論」
何故かそう再確認してくるカレンに、ヴィヴィは大きく頷く。
「聞いた? 聞いたわねっ?」
カレンがそう鋭い声で、運転席の運転手に突っ込む。
「はい。お嬢様。しかと」
そう答えた運転手の顔は見えないが、声が笑っていた。
「え……?」
あっけにとられるヴィヴィの目の前で、カレンはとても嬉しそうに微笑む。
「私、今から、靴とバックと、夏物の服と、ルームウエアと、あとマムから頼まれたお遣い物の和菓子買いに行くから、ぜ~んぶ付き合ってよね?」
「え゛……」
「今16時か~。まあ、21時には解放してあげるから、ちゃ~んと付き合ってよね、ヴィヴィ?」
「か、畏まりました、カレンお嬢様……」
負けた……と、ヴィヴィは心の中で呟き、がくりと肩を落とした。
その後、本当に全部付合わされたヴィヴィはぐったりして、予定通り21時にカレンにリンクへと送ってもらった。
「あれ? またリンクなの?」
「うん。ちょっと忘れ物して。後で朝比奈に迎えに来てもらうから」
ヴィヴィのその苦しい言い訳をさらっと信じてくれた様子のカレンは、
「そう? じゃあ、なんかあったら、いつでもいいから電話してね? 今日はもう家に帰るだけだから。また月曜日ね~!」
と明るく言って去って行った。
「うん。ありがとう。バイバイ!」
ヴィヴィは車が見えなくなるまで見送ると、ふっと息を吐いてリンクへと戻った。