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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第48章             

 2時間近く各々個人レッスンを受けた双子は、一旦屋敷に戻り両親とディナーを取ると、リンクへと向かった。

 柿田トレーナーと体幹トレーニングをし、サブコーチの指導でスケーティング技術の強化レッスンを終えると、ジュリアンにプログラムを見てもらう。

 密度の濃いレッスンを終えた双子は、それぞれくたくたになり篠宮邸へと戻った。

 ぐるりと敷地外周に張り巡らされた外壁をくぐり敷地に入ると、3階建ての屋敷が目に入る。3階の明かりが一つも灯っていないことを車窓から確認したヴィヴィは、すっと唇を引き結んだ。

 結局その日はヴィヴィが起きている間、匠海と顔を合わすことはなかった。

(やっぱり……ヴィヴィが屋敷にいないほうが、いいんじゃないのかな……)

 翌日の月曜日、朝練を終えて登校したヴィヴィは、授業中に時々ぼんやりして教師にテキストでポカリとされながらも授業を終えて帰宅した。

 私室に入るなり、左隣の匠海の私室へと通ずる扉に視線をやる。しかしそれも一瞬で、制服から着替えたヴィヴィは速読を駆使して勉強を終わらせると、防音室へと向かった。

 ピアノとヴァイオリンを各々30分触ると、キャミソールとタイツに着替えてバレエシューズを身に着ける。

 双子が小さい頃に作ってもらったバーで十分にストレッチを行うと、防音室の一角に設けられた鏡張りの壁の前に立つ。『オーロラ姫のヴァリアシオン』を流しながら、昨日言われたことを一つひとつ思い出し踊っていく。

(下を見るのじゃなく、掌を覗くように……)

 なるべく愛らしく見えるように踊ってみる。

 なかなか子供が出来なかった国王夫婦が授かったオーロラ姫は、ちやほやされてきっと我が儘に育った筈。けれど憎たらしいわけではなく、皆に無条件に慕われる愛らしさのある姫だったのだろうと思う。

 差し伸べる手一つとっても、与える印象を変えてしまう。

 ヴィヴィは気持ちを込めて、何度も踊りを反芻した。

 数十分踊っていると、クリスがやってきたのでヴィヴィは場所を譲り、その踊りを見ながらストレッチを終えると私室へと戻った。ディナーの為ワンピースに着替えてウォーキングクローゼットから出ると、すっと視線を匠海の部屋へと通ずる扉に送る。

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