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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第48章
一向に命令に従わないヴィヴィに、匠海が苛立ちを募らせたらしい。
「何度も言わせるな。さっさとベッドに上がれ」
更に声が剣呑になり、びくりと体を震わせたヴィヴィは、一瞬の躊躇の後、静かにベッドへと近づき高いスプリングに上った。
軽いヴィヴィの体重を受けて、きしりと小さく鳴るスプリングの音。
キングサイズのベッドの隅にぺたりと座り込んだヴィヴィの前に、匠海が歩み寄る。
そして自分を見下ろしてきた匠海の形の良い唇から、さらなる命令が吐き出された。
「自分で開いて見せろ」
「え…………?」
(開く…………?)
匠海の命令の意図が分からず、ヴィヴィは怪訝そうに匠海を見返す。
「お前のその躰を使って、あの夜のように、俺を誘惑して見せろ」
ヴィヴィの灰色の瞳が、あまりの驚きで見開かれる。
(そ、んな…………)
匠海の言う『復讐』の意味するものをやっと理解し、ヴィヴィの体が徐々に震え始めた。
(解っている……自分に拒否する権利が無い、ということくらい……けれど……っ)
2日前に匠海の憎悪を目にしたヴィヴィには、今の状態の兄とそういう事をするのは恐怖でしかなかった。
しかも匠海はだいぶ酒を飲んでいるようで、その事がさらにヴィヴィの恐怖をあおった。
(……怖、い……)
初めは小さかった震えが徐々に大きくなり、やがて自分でも止められないほどの痙攣へと悪化していく。
がくがく華奢な躰を大きく痙攣させるヴィヴィの前、匠海がぎしりと音をたててベッドに腰を下ろした。
「―――っ」
びくりとヴィヴィの体がより大きく震える。
俯いていた視界に匠海の伸ばされた腕が映り、ヴィヴィはギュッと瞼を瞑って全身を固くした。
(いや……っ)
その拒絶の言葉しか、ヴィヴィの中にはなかった。
そんなヴィヴィの気持ちなど関せず、匠海はヴィヴィの躰を胸の中に引き寄せた。
広い胸に閉じ込められるように、華奢なヴィヴィの躰が抱き込まれる。
がくがくと大きく痙攣する躰を、まるで力でねじ伏せるように強い力で抱きしめられていると、なぜか少しずつ痙攣が収まっていった。
血の気が引いて冷たくなっていたヴィヴィの躰が、匠海のそれによって徐々に熱を分け与えられていく。