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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第8章         

「……うん、爽やかで夏にぴったりの、いい香り」

 己の訳の分からない反応に、ヴィヴィは内心首を傾げいていたが、

 匠海の返事で、すぐにその疑問を頭から追い出した。

「好き?」

「そうだね」

「もう~っ、好きって言って?」

「はいはい、好き好き」

 駄々を捏ねる様に言い募る妹に、兄は幼児にする様にポンポンと、その金色の頭を叩いた。

「じゃあ顔も見れたし、ヴィヴィもそろそろ寝なさい」

 匠海にそう促され、ヴィヴィは時計を確認する。

「あ、そうだ! カレンに借りた本、明日には返さなくちゃ」

 確かあと一冊だけ、コミックが残っていた筈。

「カレンちゃん? 何借りたの?」

 久しぶりに聞く妹の親友の名前に、興味をひかれた匠海が尋ねてくる。

「えっとね――。……内緒」

 もう少しで、口から本の内容が零れそうになるも。

 カレンにものすごい勢いで、口止めされていたことを思い出し、ヴィヴィは言葉を濁した。

 珍しい妹の態度に、兄が更にに興味を持ったらしく。

「何? 気になる」

 譲らない匠海にヴィヴィは内心焦ったが、だがすぐに名案を思い付き提案してみた。

「んっとね~……、じゃあ、お兄ちゃんがヴィヴィの唇にチュウしてくれたら、教えてあげてもいいよ?」

「―――っ ヴィヴィ……どこの世界に、妹の唇を奪う兄がいるんだ?」

 何も塗らなくても艶々した唇を、可愛く尖らせているヴィヴィの戯言(ざれごと)に、匠海はぐったりと脱力した。

「唇にチュウするのも、ダメなの?」

(兄妹でセックスはしちゃ駄目だって、知ってるけれど――)

 それくらいのスキンシップは、許されたっていいのでは? っとヴィヴィは心の中で思う。

「駄目――。絶対、駄目っ!」

 頑として譲らない匠海に、ヴィヴィは肩を竦めた。

 このまま妹の部屋にいたら、また何を言い出されるか分からないと悟ったのか。

 兄はさっと立ち上がり、妹のリビングを通り、右側に位置するクリスの私室への扉を開き、行ってしまった。

「ちぇ~……」

 ヴィヴィは少年のようにそう呟き。

 仕様が無く、デスクからまだ読んでいないコミックを取り出し、寝室へと移動した。

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