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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第8章
キングサイズのベッドの真ん中に陣取ると、コミックに視線を落とす。
「禁断の果実――ねえ……?」
旧約聖書のアダムとイブから、タイトルを取ったのだろうか――。
前の3冊はタイトルから内容が推測できたのだが、今回のはよく判らない。
目次を見てみると、数話に渡ったオムニバスの様だった。
まずはお決まりの、『生徒と教師の秘密の恋愛』
『婚約者のいる男性を愛してしまった女性の悲恋』
『お嬢様と執事の禁断の主従愛』
(え――っ!? 執事が仕えるお嬢様に、手を出してどうするの? 首になっちゃうじゃない……)
うちの執事達は絶対そんな事しないだろう、とヴィヴィは確信しながらページを繰る。
そして、『血の繋がりのない義理の父と娘の背徳愛』
その内容に、ヴィヴィは少なからずショックを受けた。
血が繋がっていないとはいえ、この話の義父と娘は数年一緒に暮らしている「家族」なのに、男女の関係に至っている。
あれこれ考えながら読んでいるせいで、少しずつヴィヴィの速読のスピードが落ちていく。
ちらりと時計を確認すると、もうすぐ1時を回るころだった。
コミックに視線を戻すも、あと30ページは残っており。
(明日にしようかな? カレンには悪いけれど――)
あと1話分がどんな内容なのか、ちらりと見たヴィヴィは、言葉を失った。
「……え……、そんな……、どう、して……?」
知らず知らず、零れる声とコミックを持つ華奢な指が震える。
それは『血の繋がった兄妹の近親相姦』だった。
小さな頃から大事にしてきた身体の弱い妹が、ある日 同級生の男子と恋に落ちる。
自分だけのものと思っていた妹――初美を、他の男に奪われるくらいなら、
と嫉妬した兄が妹を襲い、拘束した上で強姦した。
信頼していた兄からの手酷い裏切りに、ショックを受けて塞ぎ込んでいた妹のところに、彼氏がお見舞いに来る。
そして、キスをされそうになった時、妹の頭の中には兄のことがよぎり、
結局、キスを拒んだ妹は、彼氏に別れを告げてしまう。
『どうしてっ!? どうして、こんなことしたの――っ!』
泣き叫び、兄に辛く当たる妹。
『初美…………』
贖罪として、何も妹に言い返さない兄。