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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第49章           

 翌朝。

 上掛けの中から伸びた白い腕が、ベッドサイドの目覚まし時計が鳴る1秒前に伸ばされる。

『Pi…………』

 と、か細く鳴いたそれに掌を乗せたまま、ヴィヴィは枕に顔を埋めた状態から起き上がれない。

「………………」

 起き抜けでぼ~とした頭をなんとか覚醒しようとするのだが、何故かいつもより時間がかかる。それでも何とかそこから体を起こしたヴィヴィは、ベッドから這い出た。

 細長く白い脚が、高いスプリングから、絨毯敷きの床へと下される。

 のろのろと歩を進め寝室の扉を開いたヴィヴィは、その先に広がるオフホワイトで統一されたリビングを見て、

「ぁ~~……」

と魂の抜けた様な声を上げ、扉の枠淵に半身を凭れかけた。

(なんだか、とてつもなく、都合のいい夢、みた……)

 都合のいい夢――、

 あんなに自分を憎んでいる匠海が、嫌々ながらも抱いてくれる夢。

「………………」

(……そんな訳……ないじゃない……ねえ……?)

 頭の中でそう誰かに困ったように尋ねると、間抜けな自分の頭をさっさと通常モードに戻そうと、バスルームに入った。

 薄水色のナイトウェアとショーツを脱ぎ捨てると、シャワールームに足を踏み入れる。

 シャワーヘッドから水圧の強い暖かい湯が降り注ぎ、ヴィヴィはそれを顔から浴びた。その時、

 とろり。

 自分の体の中心から、何か温かく粘度の高いものが零れ落ちた。

「え…………?」

 ヴィヴィは細い声を上げて、自分の足元を見る。

 細い太ももの内側を伝い落ちる、白濁したそれ。

 それはゆっくりとシャワーに溶かされるように洗い流され、排水溝へと消えていった。

「………………」

 ヴィヴィは上から降り注ぐシャワーの湯を浴びながら、そこを凝視していた。やがてその小さな顔が、徐々に真っ赤に火照っていく。

(そ、そんな訳……あった~~っ!?)

 ヴィヴィは心の中でそう絶叫し、へなへなと白いタイルの上に座り込む。

 昨夜の記憶が徐々に呼び起される。

 自分の上で少し苦しそうに吐き出されていた、熱い息。

 何度も自分の中を出入りしていた、逞しい欲望の証。

 そして自分でも見たことのない恥ずかしい場所を、丹念に舐めとってくれた、熱い舌。

「……――っ」

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