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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第49章           

 そのリアルな感触を思い出し、ヴィヴィはぱっと自分の口元を両手で覆った。

(う……そ……)

 顔が、躰が、恥ずかしさでか火照り、熱くてしょうがない。

 華奢な体が小さくふるりと震える。

(お兄ちゃんに、抱かれたんだ……ヴィヴィ……)

 いつの間にか早鐘を打ち始めた鼓動と相まって、高揚する気持ちに、ヴィヴィの薄い胸が破裂しそうに苦しい。

 けれどそれは、辛い苦しさ、じゃない。

 紛れもない、嬉しさ、からくるもの。

「……うそ~~……」

 ヴィヴィのその間抜けにも聞こえる声は、ガラスに覆われたシャワールームの中で小さく反響したのだった。





 その後朝比奈にバスルームの外から「お嬢様、急がないと遅刻しますよ?」と急かされ正気に戻ったヴィヴィは、朝練はなんとか集中して熟し、BSTへ登校した。

 ヴィヴィは窓際の自分の机に辿り着き、そのままぐったりと机に突っ伏してしまった。

 思考が今日の朝の続きに舞い戻る。

(でも、なんで……? なんで、お兄ちゃん……ヴィヴィを抱いてくれたの?)

 確かに、一線を越えるのを躊躇っていた匠海を、誘惑したのは自分。

 けれど、

(お兄ちゃん、すごく優しかった……口では酷い事一杯言われたけれど、ずっとヴィヴィが痛くないようにしてくれた……)

 ヴィヴィの頬がぽっと染まる。途端に昨日の匠海との交わりが脳内で映像化され、ヴィヴィはそれを慌てて打ち消した。ヴィヴィにとっては幸せな記憶の一部だが、一応、ここは神聖な学び舎だ。

 むくりと机から顔を上げたヴィヴィだったが、そこではたと気づく。

(そ、そうだ……お兄ちゃん、ヴィヴィのこと、寝室まで運んでくれたの……?)

 何故か抱かれていた途中から記憶のないヴィヴィは、その後自分で私室へ移動した覚えもない。ましてや――、

(ヴィヴィ……自分でパンツ穿いた覚え、ない……)

 『匠海がヴィヴィの寝ている間にショーツを穿かせている図』を頭の中で妄想してしまったヴィヴィは、あまりの恥ずかしさにとっさに頭を抱えた。

 ヴィヴィのそのおかしな様子を、斜め前の席で他のクラスメイトと話していたカレンが気づき、声を掛けてくる。

「ちょっ……、ヴィヴィ、大丈夫~?」

「どした~?」

 通りがかったマイクがカレンに尋ねてくる。

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