この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第49章
「あ、マイク……。ヴィ、ヴィヴィが、変なの!」
「そんなの、いつもの事じゃん」
「た、確かに……って、いつも以上に変なのっ!」
マイクの冷静な突っ込みに、カレンは一瞬納得してしまったが、慌てて訂正する。
「き、君達……」
その一部始終を途中から耳にしていたヴィヴィが、頭を抱えたまま恨めしそうに二人を睨む。
(随分な言われようじゃあ、ないですか……)
「あ、ゴメン、ヴィヴィっ 悪気はないの!」
カレンがそう言って、顔の前で手を合わせて謝ってくる傍ら、マイクはただにやにや笑っていた。
「……ううん。ありがとう。……正気に戻らせてくれて――」
「「へ?」」
ヴィヴィの意味の分からないお礼に、カレンとマイクは顔を見合わせる。
そんな二人から視線を外し、ヴィヴィは小さく嘆息する。
(本当に……、
なに、変なこと考えているの?
なに、有頂天になっているの?
お兄ちゃんが、ヴィヴィの事、女として愛してくれているかも、なんて……)
またずるずると机に突っ伏したヴィヴィを見て、
「だめだこりゃ……」
とカレンが呆れたように呟いた声が、微かに聞こえた。
「………………」
(そうだよ、駄目だよ。正気に戻ってよ……。
だって、お兄ちゃん、ヴィヴィのあそこしか……触ってないし……)
昨日のヴィヴィは纏っていたナイトウェアの腰から下しか、匠海の前に晒していなかった。
そして匠海も、ヴィヴィの大事な部分にしか、触れようとしなかったではないか。
それはつまり、女は女でも、セックスの快楽を得られればいい、『都合のいい女』としか、見られていないという証拠だった。
(そう……だよね……ヴィヴィのことなんて、興味……ないよね……)
ヴィヴィはぎゅっと薄い唇を噛む。
「………………」
あの視線。
あの視線がいけない。
受け止めるのを躊躇しそうなほど真っ直ぐ、他の誰でもない自分へと注がれる、熱っぽい匠海の瞳。
(勘違いしちゃうから……。
馬鹿で自己中なヴィヴィは、勘違いしちゃうから。
やめて……)
ヴィヴィは机の上でごろんと小さな頭を転がし、窓の外を眺める。
もう梅雨入りしたというのに、外からは日光がさんさんと降り注いでいた。