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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第49章           

(なんて……、嘘……。やめないで――)

 まやかしでもいい。

 一時だけでも、夢を見させて。

 そうしたら、耐えられるから。

 お兄ちゃんの『復讐』の道具としか扱われなくても、耐えられるから。
 





 BSTから帰宅し、勉強と楽器・バレエの練習を終えた双子は、リンクへと向かった。

「あれ~……朝練ではいい感じだったのに?」

 ジュリアンのその言葉に、ヴィヴィも同意して肩を落とす。何故か朝は3回転アクセルが3/6本の確率で決まっていたのだ。それが夜になると1/6本に下がってしまった。

 一進一退のアクセルに肩を落としながら帰り支度を始めたヴィヴィに、ジュリアンが、

「そうそう、牧野マネージャーに依頼してもらった映像分析の研究機関だけど、東京大学の院の研究室が協力してくれるらしいわ」

 牧野が所属しているマネジメント会社ING経由で、ヴィヴィの3回転アクセルの映像解析をしてくれる先を探してもらっていたのだが、それが見つかったらしい。

「へえ、そうなんですか」

(お兄ちゃんの出身大学だ……あと、真行寺さんも、か……)

「今週末、調査に来て下さるそうよ」

「分かりました。じゃあ、お疲れ様です」

 ヴィヴィはコーチである母にそう言うと、先に行っているであろうクリスを追って、ストレッチルームへの廊下を行く。途中何人かのリンクメイトやコーチに「さようなら」を言って、辿り着いたヴィヴィは、その扉の前で足を止めた。

「………………」

(そういえば……お兄ちゃん昨日、真行寺さんのとこに泊まるのかって、気にしてた……)

 2ヶ月前、匠海に紹介された大学の後輩・真行寺とデートをしたヴィヴィは、帰ろうと促す彼を誘惑し、朝帰りをして匠海を怒らせた。

 匠海から全く相手にされなくて捨てばちになっていたヴィヴィは、あの時は本当に自分がどうなってもいいと思っていた。





 真行寺の運転する青のボルボは、彼のマンションの地下駐車場へと滑り込んだ。

 助手席の扉を開けてくれた真行寺に続き、エレベーターに乗って20階建てマンションの最上階の彼の部屋に辿り着いた。玄関の扉が開けられ、入ることを促される。

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