この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第49章
吸い寄せられるように覗き込んだヴィヴィに、慈愛の色を宿した真行寺の瞳が優しく細められる。
「辛かったね……」
そう言われた途端、ヴィヴィはしゃくり上げてしまった。
頭に乗せられた暖かい掌に促されるように、熱い涙がぼたぼたと零れ落ちる。
2年間。
誰にも言えず、相談なんて出来る筈もなく、ずっと苦しかった。
それを解って貰えたような気がして、救われたような気がして。
ヴィヴィは真行寺の胸に縋り付いて、滂沱の涙を零し続けた。
その後、だいぶ長い間泣き続けてしまったヴィヴィに、真行寺は頭を撫でながら付き合ってくれた。
泣き止んだヴィヴィが、号泣してしまった事に恥ずかしくなって謝ると、真行寺は「妹が男に振られては僕の前で泣きじゃくるから、慰めるのは慣れてる」と笑ってくれた。
その後、二人は色んなことを語り合った。
『どういう人間に惹かれるか』という深い話をしていたかと思うと、部屋に置かれていた熱帯魚の水槽にへばりつくヴィヴィに、水族館に引き続き『お魚うんちく』を話してくれたり。
そして「冷蔵庫にあるものなら、何でも飲んでいいよ」と言ってくれた真行寺に甘えて、ヴィヴィはジュースを飲んでいたのだが、それが実はアルコール飲料で。
案の定、初めてのお酒に酔っぱらったヴィヴィは、いつもクリスにするように、真行寺の猫毛を撫で撫でくしゃくしゃしながら、熱帯魚を観賞していたらしい。
らしい――つまりヴィヴィには酔っぱらってからの記憶がほとんどなく、屋敷へと送ってもらう車中で、苦笑した真行寺から聞かされたのだ。
「ヴィヴィ……入らないの……?」
ストレッチルームの中から扉が開き、クリスがそう不思議そうにヴィヴィに尋ねてくる。
「あ……ぼうとしてた……」
扉の前に立って回想していたヴィヴィは、そう言って恥ずかしそうに頬を掻くと、ストレッチをしてクリスと屋敷へ戻った。
3階に上がりクリスと就寝の挨拶を交わしたヴィヴィは、私室へと入った。
ウォーキングクローゼットの中で、スケート靴の手入れをし、保管用のモコモコしたエッジケースに付け替える。