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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第50章      

 翌朝。

 やはり自分の寝室で目が覚めたヴィヴィは、

「ぁ~~……」

と呻き、胸に引き寄せた膝の上にぼすっと顔を埋めた。

(ヴィヴィ、またお兄ちゃんに、ここまで運んでもらったんだ……)

 匠海の手を煩わせてしまったことを反省しながら、その一方で胸のときめきも隠せない。

(お兄ちゃんに、いっぱい触ってもらえた……死ぬほど、恥ずかしかったけど……)

「うふふ……」

 ヴィヴィの薄い唇から笑みが零れる。しかし、それもすぐに引っ込んだ。

「お嬢様、おはようございます」

 ノックと共に朝比奈の挨拶が耳に入り、時間を確認したヴィヴィは、

「寝過ごした~っ!」

と慌てふためきながら朝練のためにリンクへと向かった。

 朝練を済ませ、BSTでの授業を終えた双子は、篠宮邸へと帰宅した。

 勉強、楽器・バレエの自主練習を終えて、ディナーをとりに1階へと降りてきた双子がダイニングに入ると、

「兄さん!」

「お兄ちゃんっ!」

 二人同時に、先に席についていた匠海に気づき、驚きの声を上げた。

 それぞれ椅子を引かれて匠海の向かいに座る。

 ヴィヴィはというと、寝室以外で匠海と顔を合わすのが初めてで、自分は匠海にどう接すればいいのか、匠海は妹として前みたいに接してくれるのかと、小さな頭の中は混乱していた。

「二人とも、オフシーズンなのに、スケジュールびっちりみたいだな」

 匠海が双子を交互に見て、そう苦笑する。

「兄さんほどじゃ、ないよ……」

 クリスがそう言いながら、ミネラルウォーターのグラスに口を付ける。

「うん?」

「兄さん……せっかく帰ってきたのに、全然、家にいないし……」

 そう言ったクリスの声は、少し拗ねたように聞こえた。

「クリス……」

 匠海が少し意外そうな表情で、クリスを見つめる。

「クリス、俺がいなくて淋しかったんだな……。分かった。今日は、お兄ちゃんがクリスに添い寝してあげよう」

「い、いい……」

 前と変わらずクリスをからかう匠海に、クリスも抵抗する。

「遠慮するな」

「……して、ない……」

「絶対する」

「……えぇ~……」

 断言する匠海に、クリスが情けない声を上げる。

 その二人の様子が可笑しくて、ヴィヴィは思わず吹き出してしまった。

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