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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第50章
「ヴィヴィも添い寝、してやろうか?」
匠海がヴィヴィのほうを見て、面白そうにふってくる。しかし、
「しなくていいっ!!」
と何故かクリスが速攻突っ込み、ヴィヴィは、
「だそうです……」
と呆気にとられて答えた。
「残念。ところでお前達、ペアのプログラム作るんだって?」
「うん……7月最終週、アイスショーで、披露することになって……ね?」
匠海からの質問にクリスがそう答え、ヴィヴィに話をふってくる。
「あ、うん。大阪と名古屋で2日ずつ。っていうか、もう1ヶ月切ってたんだね」
今更ながら気づいたヴィヴィに、
「今日から、振付するって……」
とクリスが教えてくれる。
「曲は?」
「えっと、『美しき青きドナウ』だって。マムと、バレエスクールの吉野校長が振付してくれるの」
ヴィヴィが以前に説明を受けた情報を、匠海に説明する。
双子が幼少から通っている、Yバレエカンパニーの代表・吉野都、直々の振り付けということも、巷では話題になっているらしい。
「そうか、それはかなり観てみたかったな」
匠海が残念そうに肩を落とす。
「兄さん、次はいつ、帰国できるの……?」
そのクリスの質問に、ヴィヴィの顔がさっと強張る。
(そうだ……お兄ちゃん、今回は単なる一時帰国だった……)
匠海と再会できて、思いがけなく躰を繋げる関係になり有頂天だったヴィヴィは、目の前のことばかりに必死で、また直ぐに匠海がいなくなることなど思考の片隅にもなかった。
「ん~……。今のところ、8月頭かな。9月から学校始まると、年末年始くらいしか戻れないだろうし」
「なんだ、じゃあ、またすぐ、会えるね……」
ステーキを咀嚼していたクリスが、飲み下した後、ほっとしたようにそう呟く。
「………………」
(そう、なんだ……後1ヶ月我慢したら、またお兄ちゃんに会えるんだ……)
ヴィヴィは二人から見えないテーブルの下で、きゅっと両手を握りしめる。
「クリス……お前ってやつは、可愛いこと言ってくれるな」
「可愛くは、ない……」
クリスがそこはきちんと否定してくる。
「いや、出来た弟だ。クリスは3日に1回はメールくれたのに、ヴィヴィ、1回もくれなかったし」
「―――っ!?」
匠海の爆弾発言に、ヴィヴィは驚嘆して灰色の瞳を見開く。