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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第8章
コンコン。
寝室の扉がノックされる音が鼓膜を揺らし、ヴィヴィは瞬時に覚醒した。
視界一杯に、穏やかな光に照らされた寝室が蘇る。
「お嬢様……、まだ起きていらっしゃるのですか?」
小さく呼びかけられた声は、なんと朝比奈のものだった。
焦ってベッドサイドの置時計を見ると、もう2時前。
いつの間に、1時間も経っていたのだろうか――。
「……えっと……。電気消し忘れて、うとうとしちゃってた。も、もう寝るね――」
いつものように軽く返事をしたいのに、声が震えどもってしまう。
それでも朝比奈は気づかなかったようで「お休みなさいませ」と声をかけて下がって行った。
「………………」
何故か息苦しさを感じ。
金色の頭を微かに傾けた際、無意識に息を止めていた事に気付き、吐き出した。
その途端、
先程までの妄想が、頭の中に一気にフラッシュバックする。
実の兄に縋り付いて、肉欲に溺れる妹の自分――。
「……――っ」
(ヴィヴィったら、なんてこと考えて……っ)
途端に顔から血の気が引いていく。
兄と妹の交わり――。
それは恐ろしいこと。
それは汚らわしいこと。
人間としての尊厳を真っ向から否定する、獣(ケモノ)同然の行い――。
自分の陰鬱な妄執(もうしゅう)に囚われそうになり、ぶるぶると激しく頭を振る。
(違う! ヴィヴィはそんな過ちを犯すことを、望んではいないもの――っ!
そうよ。こんな漫画を読んでしまったから、だから変な事を想像してしまっただけ。
きっとそうっ!)
コミックをすぐさま手に取ると、寝室を出。
まっすぐにデスクへと向かい、引出しの鍵を開ける。
他のコミックと元々入っていた段ボールに詰めると、透明なビニルテープで完璧に封をした。
まるで、己の中の汚いものにまで封をし、目を逸らす様に。
(朝一で、朝比奈に送り返してもらおう。ヴィヴィには、必要ないものだもの――)
そう自分に言い聞かすと、少し気持ちが落ち着いて。
大きく一つ瞬きすると、就寝支度をする為にバスルームへと向かった。
歯ブラシに歯磨きペーストを付けようとした時、下半身に何か違和感を感じ。
(…………? 生理、早まったのかな……?)