この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第50章
(な、何言って……!? で、出来る訳、ないじゃないっ。だって、ヴィヴィ、お兄ちゃんに殺されかける位、嫌われてると思ってたし……実際『復讐』してやるって、言われたし……)
ヴィヴィが頭の中でそう言い訳をしていると、クリスが意外そうに、
「そうなの……?」
とヴィヴィを振り返る。
「あ……えっと、……その……」
うまい言い訳が思いつかず、ヴィヴィがしどろもどろで言い淀む。
(まさか、クリスに「お兄ちゃん強姦して殺されかけた」と言う訳にもいかないし……)
額に冷や汗が滲み始めたのが自分でもわかる。
「まあ、俺達、ずっと喧嘩してたからな」
「……え? 兄さんと、ヴィヴィが……? 初めて、じゃない……?」
クリスが物凄く意外そうに、二人を見比べる。
確かに、ヴィヴィにも匠海と喧嘩した記憶が一つもない。叱られることはしょっちゅうあったが。
「まあ、全面的に、ヴィヴィが悪かったんだけどな」
その匠海の説明に、ヴィヴィがびくりと体を戦慄かせた。
「……そう、なの……?」
初めて妹のヴィヴィの事を家族の前で詰(なじ)る匠海に、クリスが少し怪訝そうにし、そしてヴィヴィの意見も求めてくる。
「う、うん……」
ヴィヴィはクリスと目が合わせられなくて、曖昧にそう頷く。
「ふうん……、で、仲直りしたの?」
「どうかな――」
匠海が少し首を傾けてそう言うと、何事もなかったかのようにステーキを切り分け、口へと運ぶ。
ヴィヴィの喉がぐっと詰まる。
「………………」
ヴィヴィは食欲などなくなり、目の前に出されたまま冷めていくスズキのポワレに、視線を落としていた。
「……? まあ、らしくないこと、してないで、早く、仲直りしなよ、ね……?」
クリスがそう言いながら、隣の席のヴィヴィの頭をよしよしと撫でる。
「クリスも、俺のいない間、一人で『じゃじゃ馬ヴィヴィ』の面倒大変だと思うけど、任せたぞ」
「了解……」
匠海のからかいを含んだその言葉に、クリスは小さく肩を上げて見せた。
「………………」
(クリス、そこ、否定しないんだ……)
ヴィヴィはそう心の中で突っ込み、匠海のほうをちらりと盗み見た。
匠海はヴィヴィのほうに目を向けることもなく、ずっとクリスと近況を報告しあっていた。