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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第50章      

「あれ……テレビ?」

 双子が夜のレッスンの為にリンクに着くと、リンクサイドにテレビ局のクルーがスタンバイしていた。

「THE ICEは、うち――INGと中京テレビの主催だからね。その目玉である双子プログラムの取材に来たってわけ」

 双子の後ろからついて来ていた牧野マネージャーが、そう説明してくれる。

「へえ……」

「クリス~、ヴィヴィ~。いらっしゃい」

 リンクの中から母ジュリアンが手招きする。その傍に滑り止めの靴を履いた、バレリーナの古野都先生もいた。

「「宜しくお願いします」」

と双子が挨拶し、テレビカメラの見守る中、双子プログラムの作成がスタートした。

 曲は、“ワルツ王” といわれる ヨハン・シュトラウス 2世 作曲、ウィンナ・ワルツの最高峰――『美しき青きドナウ』。ドナウ川の風景や雰囲気を上品なワルツにのせて見事に表現しており、毎年元日のウィーンフィル・ニュー・イヤー・コンサートでも アンコール曲として必ず演奏される、有名曲。

「テーマは『社交界デビューする、デビュタントを夢見る少年少女』にしたわ」

 ジュリアンと一緒に振付をしてくれる吉野の説明に、双子はふんふんと頷く。

「『夢見る少年少女』ってところがポイントね。まだ大人になりきれていない、初々しさを表現してほしいの」

 そう力説する吉野に、また双子がふんふんと頷く。

「実は大体の振り付けは吉野先生が考えてきてくれたのだけど、あなた達がどれくらいペアとして出来るか、まだ分からないから、まずそっちを調べるわ」

 ペアのコーチもしているジュリアンが、そう説明して傍にいたリンクメイトの成田達樹と下城舞を呼ぶ。

「まず、ペアの基本のハンド・イン・ハンド。つまり手を繋いで滑ってみて」

 成田・下城ペアが見本を見せて先を滑ってくれるので、その後を付いていく。

「同じ足から滑り出したほうが、滑りやすいね」

「じゃあ、左から……」

 双子は色々試しにやってみる。

「まあ普通に出来るわよね。じゃあ、次はキリアンポジション」

 成田・下城ペアが見本を見せてくれる。
 
 男女が同じ方向を向いて左右に並び、男性が左側から女性を右腕でホールドする。男性の右手は女性の後ろから回して腰骨の横を押さえ、左手は女性の左手を取る。

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