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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第50章      

「じゃあ、次はジャンプね~。とりあえずサイドバイサイドの、3回転トゥーループから」

 双子はカウントに合わせ、同時にジャンプを踏み切る。ヴィヴィより少しだけ滞空時間の長いクリスと、着氷にずれが生じるが、そこはしょうがないだろう。

「次、3回転アクセル」

(え゛……)

 ジュリアンの指示に、ヴィヴィは咄嗟に頭の中で嫌そうな声を上げたが、カウントに合わせて飛ぶしかない。

(ヴィヴィだけ転んだら、カッコ悪い~……)

 そう思いながら助走をとる。鼓膜にクリスの踏切の音が届き、ヴィヴィは同じタイミングで踏み切ってみた。

「やっぱ迫力だなあ~」

「ペアでも見れないもんな、男女の3回転アクセルなんて!」

「かっこい~!!」

 いつの間にやら増えていたギャラリーが、見事着氷した双子に、やんややんやと喝采を送ってくれる。

(あ、れ……?)

 ヴィヴィが首を捻る。

「く、クリス……」

「なに?」

「もう一回、一緒にアクセル飛んでくれない?」

「いいけど……?」

 ジュリアンにカウントしてもらって、もう一度二人で3回転アクセルを飛んでみる。

「うっそ……クリス、何者……?」

 また完璧に着氷したヴィヴィが、クリスに詰め寄り、がばっと抱きつく。

「あれ……? もしかして、僕と一緒だと、アクセル飛べる……?」

 クリスが胸の中のヴィヴィを、上から覗き込む。

「そう、みたい……。コーチ! 私、クリスと一緒だと、アクセル降りれるみたいです!」

「なんじゃそりゃ~っ!?」

 ヴィヴィの主張に、いつの間にかリンクサイドにいたサブコーチが突っ込んでくる。

「双子、パワー……?」

 クリスがそう言って、首を捻る。

「や~んっ! クリス大好き~っ!!」

 そう言ってもう一度クリスにハグするヴィヴィに、

「じゃあ、ヴィヴィ一人で試してみて」

とジュリアンが指示してくる。

「あ、はい!」

 ヴィヴィは今度こそ一人で、3回転アクセルを助走から踏み切ったが――。

「駄目、じゃん……」

 クリスが悲しそうにそう呟くのが、ぶざまにすっころんだヴィヴィにまで届いてきた。

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