この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第50章
「じゃあ、次はジャンプね~。とりあえずサイドバイサイドの、3回転トゥーループから」
双子はカウントに合わせ、同時にジャンプを踏み切る。ヴィヴィより少しだけ滞空時間の長いクリスと、着氷にずれが生じるが、そこはしょうがないだろう。
「次、3回転アクセル」
(え゛……)
ジュリアンの指示に、ヴィヴィは咄嗟に頭の中で嫌そうな声を上げたが、カウントに合わせて飛ぶしかない。
(ヴィヴィだけ転んだら、カッコ悪い~……)
そう思いながら助走をとる。鼓膜にクリスの踏切の音が届き、ヴィヴィは同じタイミングで踏み切ってみた。
「やっぱ迫力だなあ~」
「ペアでも見れないもんな、男女の3回転アクセルなんて!」
「かっこい~!!」
いつの間にやら増えていたギャラリーが、見事着氷した双子に、やんややんやと喝采を送ってくれる。
(あ、れ……?)
ヴィヴィが首を捻る。
「く、クリス……」
「なに?」
「もう一回、一緒にアクセル飛んでくれない?」
「いいけど……?」
ジュリアンにカウントしてもらって、もう一度二人で3回転アクセルを飛んでみる。
「うっそ……クリス、何者……?」
また完璧に着氷したヴィヴィが、クリスに詰め寄り、がばっと抱きつく。
「あれ……? もしかして、僕と一緒だと、アクセル飛べる……?」
クリスが胸の中のヴィヴィを、上から覗き込む。
「そう、みたい……。コーチ! 私、クリスと一緒だと、アクセル降りれるみたいです!」
「なんじゃそりゃ~っ!?」
ヴィヴィの主張に、いつの間にかリンクサイドにいたサブコーチが突っ込んでくる。
「双子、パワー……?」
クリスがそう言って、首を捻る。
「や~んっ! クリス大好き~っ!!」
そう言ってもう一度クリスにハグするヴィヴィに、
「じゃあ、ヴィヴィ一人で試してみて」
とジュリアンが指示してくる。
「あ、はい!」
ヴィヴィは今度こそ一人で、3回転アクセルを助走から踏み切ったが――。
「駄目、じゃん……」
クリスが悲しそうにそう呟くのが、ぶざまにすっころんだヴィヴィにまで届いてきた。