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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第51章
「『マイム』とは何ですか?」
「バレエの技法なのですが、言葉を発しないので動きで気持ちを表現するんです。プログラムの中ではクリスだけするのですが、ちょっとやるので見てもらえますか?」
ヴィヴィがそう尋ねると、女子アナは「はい。ぜひお願いします」と答える。
「じゃあ、意味を推理してみて下さい」
クリスはそう言うと、腰かけていた椅子から立ち上がる。
「一つ目……」
右掌を上にし、ヴィヴィに差出し、自分の右手の甲を右頬に添え、輪郭に沿って左頬まで手の甲で撫でる。
「次です……」
右掌を上にし、自分の胸に当て、その手をヴィヴィに差し出す。そして両手を上に上げ、両掌を頭の上でくるくると回す。
「え~!? あ、でも、最初のマイムは何となく、分かりますね。ええと……『ヴィヴィちゃんが、綺麗ですね~』ではないですか?」
女子アナが楽しそうに身振り手振りで聞いてくる。
「はい、合ってます。『貴方』と『美しい』というマイムを組み合わせています」
ヴィヴィがそう解説する。
「二つ目は~『クリス君がヴィヴィちゃんと……』ってところまでは分かりましたが、これが分かりませんでした」
女子アナが両手を上に上げ、両掌を頭の上でくるくると回すマイムをしてみせる。
「これは『踊る』という意味です。『私』と『貴方』が『踊る』というマイムですね」
クリスが振付を繰り返しながらそう解説する。
「とても素敵ですね! 他にどんなマイムがあるのですか?」
女子アナが破顔してさらに尋ねてくる。
「これは分かりますか?」
クリスが右手で自分の左薬指を指さす。
「あ! 『結婚』じゃないですか?」
「そうです」
「分かりやすいのもありますね」
と女子アナが喜ぶ。
「これはどうですか?」
ヴィヴィが拳を作った両手を、腰骨あたりでクロスしてみせる。
「え? これは難しいですね」
「これは『殺す・死ぬ・呪う』というマイムです」
ヴィヴィが解説すると「そんな怖いマイム、バレエで使うんですか?」と女子アナが驚く。