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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第51章
「心理的……」
「絶対に成功させなければ、周りの期待に応えなければ……等、そういう心理状態が起因となり、踏み切りを慎重にさせるために速度を落とし、高く遠くに飛ぼうとするために深く沈み込んでしまう――という具合に」
「………………」
石井教授の推論に、ヴィヴィが黙り込む。
「だから……僕と一緒に飛ぶと、成功するのかも……」
「え……?」
傍にいたクリスのその呟きに、ヴィヴィが振り返る。
「僕と一緒に、アクセル踏み切る時……ヴィヴィ、何も考えてないでしょ……?」
「う、うん……。一緒だと、新鮮で面白いなとか、成功すると楽しいなとか……そういうことは思ってるけれど」
(そっか……そういうことか……)
ヴィヴィはようやく3回転アクセルの不調の理由が解り、納得し、ほっと胸を撫で下ろした。
「プレッシャーは、旨く使わないとね?」
ジュリアンのその忠告に、ヴィヴィは素直に「はい」と頷いて返した。
「また、2週間後に計測させてもらいに来るよ」
そう言い残して、石井教授の研究室の一行は帰って行った。
「クリス……手間掛けるけれど、しばらくヴィヴィとアクセルの練習してくれる?」
ヴィヴィが申し訳なさそうに、自分より背の高いクリスを見上げる。
「勿論、喜んで……僕もヴィヴィと合わせて飛ぶと、楽しいし……」
そう優しく言って、ヴィヴィの頭を撫でてくれたクリスに、ヴィヴィは心からのお礼を言った。
月曜日。
朝練を終えてBSTへと登校したヴィヴィは、午前中最後の授業を終えるチャイムが鳴ってからだいぶ経つというのに、ランチにも行かず窓際の自分の席に座っていた。
「………………」
ヴィヴィは両腕を伸ばして机の上に突っ伏すと、その顔の前で両手に掴んだ紙片をぴらぴらとかざす。
(あ~……。何も考えてなかった……)
「ヴィヴィ~、早くランチ行こうよ~? って、あ~、進路調査票かぁ」
いつも真っ先にランチへと席を立つヴィヴィに、不思議そうに声を掛けてきたカレンは、その手にしている物を見て、ヴィヴィのこの状態を納得する。そしてその腕を掴むと、
「取り敢えず、ランチ取りながら話そう?」
とヴィヴィをランチへと誘った。