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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第52章
「……全国、50位……」
ヴィヴィがげんなりとそう呟くと、
「え~っ、すっごいじゃないっ!! 全国でそんなに上位って!」
とカレンは手放して褒めてくれたが、クリスは違った。
「全然凄くない……」
そう厳しい感想を、嘆息と共に零す。
「え……? く、クリス……?」
初めて『溺愛する妹』にそんな態度を取るクリスを目の当たりにしたカレンが、自分は何か聞き間違えたのかという表情で問い直す。
「僕達が在籍している予備校の生徒だけ――というマイノリティー(社会的少数者)の中での全国50位だよ? 世の中にどれだけ予備校が存在していると思っているの? 仮に主要な予備校が5校あったとすると、単純計算したらヴィヴィは全国で250位という結果になるんじゃないのかな」
「「………………」」
クリスがすらすらと並べ立てる反論に、ヴィヴィとカレンは呆気に取られて黙り込む。
「おい……どうしたんだ、クリス?」
傍で3人の様子を見ていたらしいアレックスが、ぽかんとした表情でクリスを見つめてくる。
「どうもしていないよ。正論を言っているまで」
クリスは他でもない親友のアレックスに、そうつれなく返すのみ。そのただならぬ空気に、賑やかだったクラスルームが、しんと静まり返った。
「いやいや……。だって、ヴィヴィは最初から東大なんて目指してなかったのを、クリスが無理強いしてるんだろ?」
そう加勢してきたマイクは、先日ランチを一緒にとっていた時、クリスがヴィヴィに一方的に「一緒に東大行きたい」と言っているのを目にしていた。
「マ、マイク……」
険悪な雰囲気になり始めた皆に戸惑ったヴィヴィが、そう名前を呼んで止めようとする。しかしそんなヴィヴィを遮ったのは、他ならぬ当事者のクリスだった。ヴィヴィをその胸に抱くように引き寄せる。
「ヴィヴィは『僕の妹』だ。その教育方針については、口出しして欲しくないな。行くよ、ヴィヴィ――」
クリスは自分に注目しているクラスメイトにそう言い放ち、ぐるりと皆の顔を見回すと、ヴィヴィの手首を引っ張ってクラスルームから出て行った。