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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第52章
「今までずっと、一緒だった……、僕とヴィヴィは――。だから大学も、同じところ、行きたい……」
「………………」
確かにクリスの言うとおり、双子は学校も一緒なら、所属リンクも一緒、もちろんコーチも。習い事もほぼ一緒。
大学進学は、生まれて初めて、双子が異なる選択をする機会なのかもしれない。
「離れたく、ない……」
そしてそれが、クリスの答えなのだ。
「クリス……」
ヴィヴィはクリスから凭れていた半身を離すと、おもむろにクリスの首に手を添え、自分へと引き寄せた。
ぽすりと音を立て、ヴィヴィの制服のワンピースの膝に頭を収めたクリスを、ヴィヴィはよしよしと撫でる。
「分かったよ。分かったから、クリス……」
「ヴィヴィ……?」
不思議そうに自分の名を呼ぶクリスの金色の髪を、ヴィヴィはくしゃくしゃと撫でまくる。
「クリスがこんなに『甘えん坊』ということは、充分に分かったから」
「ち、がう……」
「や~い! 『甘えん坊』」
「違うったら……!」
クリスはそう言うと少し唇を尖らせた。
「でもね、クリス……。同じ大学に行っても行かなくても、ヴィヴィとクリスはずっと一緒だよ? だって兄妹だし、しかも双子だし! 切っても切れない縁――でしょ?」
血の繋がった兄妹、家族。
それは勿論――、匠海も同じこと。
「………………」
クリスはヴィヴィからの確認に、何故か黙り込んでしまった。ヴィヴィはしばらくそんなクリスの様子を見守っていたが、やがて桃色の唇を開いた。
「ヴィヴィ、東大受けるよ――。頑張る。なるべく……弱音、吐かないことにする。だから、クリス。一緒に受験勉強、頑張ろうね?」
「ヴィヴィ……本当に……?」
クリスが膝の上から、恐る恐るヴィヴィを見上げてくる。
「うん。だから、これから1年半、ヨロシクね~」
そう腹を決め、にかっと白い歯を見せて笑ったヴィヴィに、クリスがその妹の薄いお腹に顔を埋め、腰にギュッと抱きついてくる。
「うん。ヴィヴィ……ありがとう……」
そうくぐもった声でお礼を言ってきたクリスに、ヴィヴィは苦笑する。