この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第52章
7月中旬を勉強・スケート・バレエ・習い事と、パンパンのスケジュールで熟した双子は、7月の最終週、THE ICEに参加するため、新幹線で新大阪へと向かっていた。
グリーン席に並んで座った双子は、引率のジュリアンコーチと牧野マネージャーに若干呆れられながらも、移動中もiPadで予備校の講習を受けていた。
しかも、3倍速で――。
なので短時間で受講できるが、その分疲労も凄い。
ヴィヴィは、1コマ受講し終えてはぐったりし、自分のスケート動画をチェックしたり、メールチェックして頭を切り替え、そしてまた3倍速で受講し――を繰り返していた。
急にクリスが頭を撫でなでしてきたので、ヴィヴィは動画を一旦停止し、イヤホンを抜く。
「どした~?」
「うん……。ちょっと疲れてるように、見えたから……」
クリスはそう言って、ヴィヴィの金色の頭を自分の肩へと引き寄せる。
「大丈夫だよ。正直ちょっと、眠いけれど……ふわわ」
ヴィヴィはそう言い終わらぬうちに掌で口元を押え、欠伸する。
「今週は、大阪、名古屋に、強化合宿で大変だけど……」
クリスがそう言う通り、夏休みに入ったばかりの7月の最終週は、スケジュールがびっちりだった。
THE ICEは、大阪で2日間。間1日の移動日を挟み、名古屋で2日間。
そして翌日から2日間は、スケ連主催の強化指定選手の合宿が、名古屋の中京大学で行われる。
「だね~。お互い体調管理、気を付けようね~」
クリスに凭れながら、長い睫毛をたたえた瞼を下していたヴィヴィに、クリスも頷く。
「終わったら、兄さんにも会えるし、ね……?」
「…………へ?」
クリスの続けたその言葉に、瞼をゆっくりと開けたヴィヴィは、ぽかんとしながら間抜けな声を上げた。
「もしかして、ヴィヴィ……、聞いてないの……? 兄さん、8月1日に帰国するよ……?」
「………………」
ヴィヴィはあまりにも突然の知らせに、絶句するだけで何も発することが出来なかった。
そう言えば、匠海は前回帰国した際に『8月頭に帰国するかも』と言っていた。色々ありすぎて、すっかり失念していた。
(……う、そ……)