この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第52章
「まさか……まだ、仲直りしてない、の……?」
クリスがヴィヴィから体を離すと、少し怪訝そうに見下ろしてくる。
(…………えっと――)
「…………ノー・コメント」
ヴィヴィはそう言うと、自分の口を片方の掌で覆いながら、もう片方の手でイヤホンを装着し動画を再生した。
「……は、あ……?」
イヤホン越しにクリスの呆気に取られた相槌が聞こえたが、ヴィヴィは聞こえないふりを決め込んだ。そのうちクリスが諦めたように、自分もイヤホンを装着してiPadで動画を確認し始めた。
「………………」
(ごめん、クリス……。だって、ヴィヴィにも、分からないから……。
兄妹としては、表面上は仲直りしたのか、どうなのか……)
そう心の中で当惑し、けれど動画を睨むように見つめていたヴィヴィは、結局そのコマの授業は全く頭に入らなかった。
ぽんぽんと頭を叩かれたヴィヴィが視線を上げると、後ろの席に座っていたジュリアンが、
「あと数分で新大阪よ~、お二人さん?」
と知らせてきたので、ヴィヴィは受講を諦めて下車準備を始めた。
THE ICEの大阪会場となる大阪市中央体育館に前日入りした双子は、関係者各位に挨拶を済ませると、練習着に着替えて準備を始めた。
「あ……っ」
クリスとストレッチをしていたヴィヴィは、小さくそう呟き、瞳を輝かせた。
「真緒ちゃんだ~っ!」
ストレッチ用のスペースに入ってきた浅田姉妹を見つけたヴィヴィは、すくっと立ち上がると憧れの浅田の元に飛んで行った。
「あっ! ヴィヴィだ~。今回は双子プログラム引き受けてくれて、ありがとう」
そうにっこりと素敵な微笑みを見せてくれた浅田の手を、ヴィヴィがしかと両手で握りしめる。
「とんでもございませんっ! 光栄です~! 同じリンクで滑れるだけでもっ!」
喜色満面のヴィヴィを目にした浅田が、引きつった笑みを浮かべながら隣に立っている姉の舞依に、
「真緒……新興宗教開いたら、意外に行けるかも……?」
と尋ねれば、
「マオマオ教~?」
と舞依が面白がる。