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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第53章          

 暗転した会場に、THE ICE2019のスタートを宣言する、アナウンスが流れる。

 浅田姉妹を筆頭に、サルサの音楽に乗せて出演スケーター総出の、オープニングダンスが披露される。

 サルサ特有の総フリンジのピンク衣装を纏ったヴィヴィは、黒い衣装をシックに着こなした、ロシア男子シングルのマキシム・コトフン(21)とペアを組み、一生懸命大人っぽく踊りを披露する。

 観客も豪華な出演陣に、最初からオーバーヒート気味で盛り上がっていた。

(う~ん、弾けたモン勝ちだなっ!)

 ノリノリの周りのスケーターを見回し、ヴィヴィも『悩殺ダンス』宜しく、長い髪を掻き上げる仕草で頑張ってみるが、それを目の前で見たマキシムは、にやっと笑っていた。

 その後、各人試行を凝らせた個人のエキシビションナンバー、女子グループナンバー、男子グループナンバー等が繰り広げられ、いよいよ『おおとり』の浅田姉妹プログラムの前の、双子プログラムの番が回ってきた。

「き、きんちょ~っ!!」

 ヴィヴィはロマンティックチュチュを模した、ベアトップとひざ丈のチュチュという真っ白な衣装を纏った胸に両手を置き、初めて披露する双子ペアプログラムで緊張しまくっていた。

 試合とはまた違う、「自分が失敗したら、クリスに迷惑かける」というプレッシャーがあった。

「大丈夫、大丈夫~! リハ、すっごく良かったもん」

 次の出番を控えて待機している浅田真緒が、そう言って勇気づけてくれる。

「そうだよ……。僕もいるんだし……、Let’s enjoy it!」

 クリスもそう励ましてくれ、ヴィヴィは大きく頷く。

 振付の吉野都先生の『ヴィヴィは、恥ずかしがりながらも、ドキドキ夢見ているような感じで』というアドバイスを胸に刻む。

 係員の指示に従って、先に滑っていたロシア女子シングルのアデリナ・ソトニコスと入れ替わるように、一人バックヤードからリンクへと出ていく。

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