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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第9章          

「何言ってんの! ヴィヴィは細くてもしなやかでいいんだよ。私だってなれるもんならヴィヴィみたいなスレンダーになりたいさ~」

 どうやら女子というのは、無いものねだりが好きらしい。お互い顔を見合わせて苦笑する。

「お~い、サラ。弟が「おねむ」みたいだよ」

 他の従弟に呼ばれたサラは「寝かしつけてくるね」と言って隣から立ち上がった。

 サラが7歳も年下の弟を重そうに抱っこしてサンルームを出ていくのを、瞳を細めて見つめていたヴィヴィだったが、

 それと入れ替わりに、長いディナーを楽しんでいた大人達がぞろぞろとやって来た。

 壁にしつらえられたアンティークの時計を見ると、もう10時前だった。

 そろそろ大人達にサンルームを明け渡たす時間だと察した従兄弟達が、ゲームを終えサンルームを後にしていく。

 ヴィヴィは「サラが戻ってくるかも」と待とうか迷ったが、

 視界の端に匠海を見つけた途端、迷いなく席を立った。

 「おやすみなさい」と皆に就寝の挨拶をしつつ、待っていてくれたクリスの傍に行こうとするも、いきなり誰かに腕を掴まれた。

「クリスもヴィヴィももう16歳なんだから、まだいいだろ?」

 絡んできたのは母の兄、ダニー伯父さんだった。

 この人は底抜けに明るい。酒が入れば突き抜けて明るい。

 けれど酒が入るとあまり人の迷惑が考えられなくなる、ちょっと困った人だった。

「……まだ14歳ですよ、伯父さん」

 クリスがやんわりと訂正しこの場を逃れようとするが、伯父はがははと笑い飛ばす。

「何言ってんだ! 英国では5歳から飲酒出来るんだぞ」

 確かに伯父の言う通り。

 英国において家庭では五歳から、バーやレストランではビールとリンゴ酒なら16歳から飲酒が認められている。

「私達、その辺は日本人らしくしようかと――」

 誤魔化し笑いを浮かべつつ拒否してみるも、周りの大人達は「お前達は3/4は誇り高き英国人じゃないか」と囃(はや)し立てられる始末。

 目線で父と母に助けを求めるが、2人ともかなり泥酔し他の親族との話に夢中で、こちらを見さえしなかった。

(この両親にして、この親族あり――後で覚えといてよ、ダッド、マム!)

 隣のクリスに目くばせで「しょうがない、飲んでるフリをして隙を見て逃げ出そう」と訴えると、双子の兄は小さく頷いた。

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