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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第9章
コの字型のワインレッドの革張りソファーに大人達に囲まれて座らされ、執事が用意してくれたリンゴ酒が双子の前に置かれる。
(しょうがない。ちょっとだけ舐めて――)
フルート型の細長いグラスを取ろうと腕を伸ばした瞬間、後ろから誰かに手首を握って止められた。
「え…………?」
驚いて振り返った顔の直ぐ傍にあったのは、匠海の整った顔。
「困りますよ、伯父様方。この子達はスポーツ選手でもあるのですから」
ソファーの背越しに後ろからヴィヴィの手を掴んでいる匠海が、そう言って大人達を諌(いさ)める。
「つまんないこと言うなよ~、匠海」
だが伯父達は笑うだけで。
「それにクリスはともかく、ヴィヴィは見た目と違ってお子ちゃまなので、アルコールなんて飲ませたら大変なことになりますよ」
匠海のその言葉は、ヴィヴィの鼓膜を音の信号として震わせたけれど、その意味など理解出来なかった。
ただただ、握られた手首が熱くて。
そこから火がついたようにどんどん熱を持っていく身体を、皆に知られないようにするだけで精一杯だった。
やっと兄に手を離されたヴィヴィはばれぬ様 小さく息を吐き出し、高鳴り始めた鼓動を落ち着かせようと必死だった。
「そうなの? 今年は結構大人になったなと思ったけれど」
伯母の1人が、ヴィヴィに微笑むも、
「そういえば、去年までは『お兄ちゃん、お兄ちゃん!』って匠海の周りをうろちょろしてたのに、今年はしてなかったな。もう兄離れしたのか?」
姪の気持ちなど知る由もないダニー叔父さんは、ヴィヴィをからかってくる。
(もう、伯父さんったらっ 余計なことばっかり!)
「そ、そうよ。ヴィヴィはもう大人の女性になったんだもん!」
皆の注目を集めてしまったヴィヴィは、薄い胸をそらして腰に両手を当てて何とか反撃する。
「は! ヴィヴィが『大人の女』? こりゃ面白いことを聞かせてもらった」
精一杯の虚勢にも爆笑しやがる親族達を、ヴィヴィは納得いかない瞳で見渡すしかなかった。
(むう……そりゃあ、胸まっ平らだけどさっ!)
「じゃあ、そろそろお子ちゃまは解放してあげよう。Good Night クリス、ヴィヴィ」
やっと退室して良いとのお許しを得た双子は、それぞれ就寝の挨拶と、また1年後の再会を約束してサンルームを後にした。