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第53章 　 　 　　　　　

「『プレッシャー』かぁ……」

「真緒ちゃんは、どうやって『プレッシャー』と戦ってきたんですか？」

　僭越ながら、同じアクセルジャンパーとして一時代を築いた浅田に、ヴィヴィは先人としての意見を賜りたいと聞いてみた。

「う～ん、そうだねぇ。……ほら、重荷に感じて逃げ出したくなったり、投げ出したくなったりするでしょう？　でも、結局出来ないし。自分がやるしかないし……。やっぱり、『浅田真緒』であることからは、逃れられないから――」

　そうヴィヴィの質問にとても丁寧に答えてくれた浅田は、最後の言葉は特に噛みしめるように口にした。

「………………」

　ヴィヴィはじっと見つめていた浅田から視線を外すと、黙り込んで自分の太ももを睨むように見つめる。

（そうだ……。

　ヴィヴィも、『スケーターのヴィヴィ』であることから逃れられないし……。

　プレッシャーなんかで、投げ出したくない。
　
　そして、お兄ちゃんの『実の妹であるヴィヴィ』からは、

　永久に逃れられない――）

「ヴィヴィ……？」

　黙り込んだヴィヴィに、浅田が心配そうに覗き込んでくる。ヴィヴィは「真緒ちゃん……」と泣きそうな顔で呟くと、

「やっぱ、大好きです――っ！！」

　そう叫んで、ひしと抱き着いたヴィヴィを、浅田は笑って抱きしめ返してくれた。






　見事４日間のＴＨＥ　ＩＣＥを成功させた選手達は、また試合やショーでの再会を約束して解散した。

　双子は翌日から２泊３日あるスケ連の強化合宿のため、中京大学へと前日入りした。

　2019年度の日本スケート連盟・特別強化選手は、

　男子シングル：羽生結弦(25)、火野龍樹(25)、田内刑事(25)、
　　　　　　
　　　　　　　　宇野昌麻(21)、篠宮クリス(16)。

　女子シングル：村下佳菜子(25)、宮平知子（21）、本田まりな(18)、
　
　　　　　　　　篠宮ヴィクトリア(16)。

　ペア　　　　：マーヴィン藤堂(29)、棚橋成美(27)。

　アイスダンス：アルフレッド渋谷(23)、マリア渋谷(19)。

　――総勢13名。

　各分野の一流講師陣を招いての、合宿が行われる。