この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第54章
「あ~あ……。すっごく楽しみに帰ってきたのに、残念~……」
そう脱力した声を漏らしながら、母は父から体を離した。父は今度は双子に向き合い、相好を崩す。
「お帰り、オチビちゃんたち。ショーは上手くいったかい?」
「うん。大成功だったよ……ね? ……ヴィヴィ……?」
父に頭を撫でられながら、クリスが隣のヴィヴィに話を振る。
「あ……うん。皆喜んでくれたし、クリスとペア出来て勉強になった」
同じく頭を撫でられながらヴィヴィがそう答えると、父はうんうんと頷いて3人を招き入れた。
執事達が3人分の荷物を片してくれたので、4人はそのままディナーを取ることになった。
ヴィヴィ以外の3人が楽しそうにショーや合宿の話をしている最中、ヴィヴィは箸を手に取りながらも、ぼうと目の前のお造りを見つめていた。
「………………」
車の中で感じた気持ち悪さはなりを潜めたというのに、何故か体がすごく重く感じて食欲が湧かない。
(なんか……ヴィヴィ……、凄い、落ち込んでる……。がっくりきてる。
あんなにお兄ちゃんに会うのが憂鬱で、逃げちゃいたいくらいだったのに……)
皆に聞こえないよう小さく溜め息を漏らしたヴィヴィは、両手で箸置きに箸を置いた。
「ヴィヴィ……? 大丈夫……? 疲れちゃった?」
いつもと違うヴィヴィの様子に、隣のクリスが心配そうに尋ねてくる。
「あ~、ヴィヴィは『お兄ちゃん子』だから、余計、匠海が帰って来られなくて寂しいか……。おいで」
父に呼ばれ、ヴィヴィは朝比奈に椅子を引いてもらい立ち上がると、父の所まで歩いていく。何故かその膝の上に座らされ、よしよしと幼児のように頭を撫でられたヴィヴィは、
(ダッド……ヴィヴィのこと、何歳児だと思ってるんだろう……)
と心の中で思ったが、突っ込むのも億劫でされるがままだった。
「元気出せ~。今回は確かに帰国できなかったけれど、朗報もあるぞ~! 8月末に私達が英国に里帰りする時、匠海も同行するってさ」
「……――っ」
父の膝の上で、ヴィヴィは息を呑んでその顔を見つめる。
(……っ ……ほ、本当……?)
「え……? 本当、ダッド?」
まるでヴィヴィの心を代弁するかのように、クリスがそう尋ねる。