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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第54章         

「ああ。9月から留学プログラム始まるから、8月中にバケーション取っておきたいんだって。ロンドンもエディンバラも行くってさ」

 8/20~8/27の間に、父の実家のロンドン、母の実家のエディンバラにそれぞれ滞在することになっている。万が一、遠方のエディンバラは無理だったとしても、ロンドンは匠海のいるオックスフォードから車で1時間程の距離――。最悪でも1日くらいは、匠海に会える希望があった。

 静かになっていたヴィヴィの心臓が、またとくとくと波打ち始める

「そっか。兄さんも、一緒なんだ……。良かった……」

 クリスがそう可愛いことを言った目の前で、

「もう、グレコリーったら人が悪いっ。もっと早くに言ってよ!!」

とジュリアンが憤慨して父を睨む。

「ごめんゴメン。――ってことだから、ヴィヴィも元気出せよ?」

「うん……ダッド」

 ぎゅ~っと首に抱きついたヴィヴィに、父は「可愛いかわいい」と頭を撫でたのだった。






 夏季休暇中、双子は共に、自分達の今やるべきことを頑張っていた。

 たまにヴィヴィが一杯いっぱいになった時は、クリスがクラスメイトと遊びに行く場を設定してくれたりして、ガス抜きも上手くしつつ、『教育兄』のスケジュール通りに勉強は進んでいた。

(まあ、進まないと『脇腹くすぐりの刑』で、笑い死にするから、やるしかないんだけど……)

 ヴィヴィは篠宮邸のライブラリで、隣で勉強しているクリスをちらりとみやる。

「あ…………」

 そのクリスがiPadを見つめ、小さな声を上げる。

 ヴィヴィが身を乗り出し、クリスのiPadを覗き込もうとすると、クリスが椅子を引いて近くに寄ってきた。

「渋谷兄妹から、THE ICEの、出演者全員宛に、メール来てて……」

「ホントだ……。えっと、『THE ICEで撮りためた動画を編集して纏めたから、動画サイトにアップしていい?』だって」

「再生、する……?」

 クリスの問いに、ヴィヴィは頷いて見せる。

 全米ヒットチャート1位に数週輝き続けているアップテンポな曲をBGMに、20名のスケーターの動画が流れる。

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