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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第54章         

 その言葉に後ろにいた少女が、双子の前に飛び出てくる。髪を茶色に染めて毛先をくるくるに巻き、ばっちり化粧を決めた今どきの女子高生といった感じの少女は、真行寺とはそれほど似ていなく、背も155センチほどだった。

「初めまして。篠宮ヴィクトリアです。お兄さんにはお世話になってます」

「兄の、クリスです……」

 ぺこりとお辞儀をしたヴィヴィの隣、クリスは不動のまま、少女を見下ろしていた。

「うわあ……。ホントに篠宮兄妹だ!」

 カラーコンタクトを入れた少女の瞳が見開かれ、みるみる驚きの表情へと変わる。

「円(まどか)……。まさか、僕が嘘言ってると思ってた訳?」

「うん。だって、ヘタレのお兄ちゃんが、まさかこんな有名人と知り合いだなんて、信じるはずないじゃん?」

「………………」

 真行寺兄妹の強烈なやり取りに、双子は顔を見合わせて苦笑いするしかなかった。

「真行寺 円です。高2だから、タメだよね? マドカってよんでね~」

 少女はそう自己紹介すると、にかっとあけっぴろげな笑顔で双子を交互に見詰める。

「うん、円ちゃん」

とヴィヴィが頷けば、

「マドカでしょ!」

と円に詰め寄られる。10センチ下から睨み上げられ、ヴィヴィは恐る恐るその名を呼びなおす。

「ま、マドカ」

「よしよし。クリスもよ?」

「……うん。マドカ」

 クリスは円に圧倒されたように、素直にその指示に従って見せた。

 自己紹介を終えた一行は、真行寺の案内で一通り本郷キャンパスを見学した後、「のどが渇いた」と言う円の鶴の一声で、校内のカフェで一休みすることになった。

「真行寺さんは、経済学部 経営学科なんですよね?」

「うん。匠海さんと同じだね」

「匠海さん?」

と円が真行寺に問えば、

「ああ、二人のお兄さん。今年卒業されたんだ」

と真行寺が妹に説明する。

「ふうん」

「そう言えば……クリスは将来、何したいの?」

 ヴィヴィは今更ながら、お互いどの学部に進みたいかを話していないことに気づき、クリスに話を振る。

「ん~……。会社経営?」

 そう何でもない事のように呟いたクリスに、ヴィヴィは「えっ!?」と驚きの声を上げる。一方のクリスも、

「え……?」

と、ヴィヴィの驚きの声に、不思議そうな声を上げた。

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