この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第54章
三人の話を静かに見守っていた真行寺は、皆を見回して口を開いた。
「じゃあ、ヴィクトリアちゃんと円は文科一類で、クリス君は分科二類、だね」
その言葉に、同級生3名は皆大きく頷いた。円がテーブル越しに、ヴィヴィの手を握ってくる。
「ヴィヴィ、一緒に頑張ろ~!」
「うん! 同じ目標のあるマドカに会えて、俄然やる気出た!」
ヴィヴィも円の手を握り返してニコリと笑う。
「今日ここ来て、ヴィヴィ達に会えて、本当に良かった。ありがと、お兄ちゃん!」
「おや、めずらしく素直」
可愛く礼を言った円に、真行寺はそうおどけた様に返し苦笑する。
「いっつも素直な可愛い妹じゃんっ」
「え~……」
『鬼妹』には結局敵わないらしい、真行寺だった。
その後、真行寺の属している経済学部の経営戦略の教授に、そこを志望しているクリスが紹介された。クリスはいつも寡黙な彼とは打って変わり、流暢に質問を繰り返し、真剣に教授の話に耳を傾け、帰るころにはとても満足そうな表情をしていた。
目標も新たに勉強に打ち込んだ8月はあっという間に過ぎ、ヴィヴィは今、機上の人となっていた。
ブリティッシュエアラインのファーストクラスに家族と一緒に乗り込み、クローゼットに纏っていたカーディガンと荷物をしまう。席に着いたヴィヴィにアテンダントが、
「ウェルカムドリンクは如何いたしましょう?」
と尋ねてきてくれたのに、確か、
「ミントティーを」
と答えて以降、ぱたりと記憶がない。
けれどロンドン・ヒースロー空港到着30分前に、クリスに叩き起こされた今、ファーストクラス備え付けのパジャマを纏い、なぜかフルフラットのベッドと化したシートに眠っていたヴィヴィは、首を捻りながらも更衣室でワンピースへと着替えた。
空港からリムジンに乗り込んだ一行は、ロンドン郊外にある父の実家へと向かう。
「しかし、ほんと爆睡だったな、ヴィヴィは」
父グレコリーが、ヴィヴィを見つめて苦笑する。
「クリスが甲斐甲斐しく面倒みてたのが、微笑ましかったわね」
「え……?」
母ジュリアンのその言葉に、ヴィヴィは意味が分からなくて首を傾げる。