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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第54章
「ヴィヴィを宥めすかしながらなんとか起こして、夢遊病状態で更衣室連れて行って、パジャマに着替えさせて……。って、ヴィヴィ、覚えてないの?」
ジュリアンのその説明を聞いても、ヴィヴィは全く心当たりがない。
「うん、全然……。ごめんね、クリス」
「寝ぼけてるヴィヴィも、可愛かったから……。全然問題ないよ……」
そう言ってヴィヴィの髪にキスを落とすクリスを見て、
「なんか、匠海がいなくなってから、クリスの『ヴィヴィLOVE』度合が増幅したような気がするわ」
とジュリアンが呆れたように双子を見比べる。
「兄さんに、『じゃじゃ馬ヴィヴィ』の面倒、任されたから……」と、クリス。
「まあ、家族の仲がいいことは良いことだ」
そう締めくくってわっはっはと笑う父の隣、ヴィヴィは無言を決め込む。
「………………」
(寝すぎて、頭がぼ~っとする……)
実は昨夜、いつも通り夜のリンクから戻ったヴィヴィは、就寝準備を終えてベッドに入ったのだが、全く眠れなかったのだ。夏休みとはいえ、早朝から深夜までスケジュールびっちりのヴィヴィは、肉体的にも精神的にもへとへとなのに、全然眠れる気配がなかった。
何度も広いベッドの上で寝返りをうつヴィヴィだったが、1時間位して寝る努力をするのにも疲れ果て、寝るのを諦めた。
結局書斎で朝まで勉強をしたヴィヴィは、そのまま飛行機で爆睡し、ロンドンへと到着してしまったのだ。
(色々考えたんだけど、結局、『お兄ちゃんの妹』であることは、永久に変わらないんだから……。お兄ちゃんが求めるような『良い妹像』でお兄ちゃんの目の前に立つしかない……)
家族を乗せたリムジンが、広大な屋敷の敷地へと滑り込む。ヴィヴィはベージュのシャツワンピースの上でぎゅうと掌を握りしめた。
(――って、頭ではちゃんと、解ってるんだよ? で、でも、こ、心のほうの準備が~……っ!)
目の前に迫った立派な屋敷の中に、匠海がいる。
今度は『ロンドンの実家の着いたよ』と父宛に匠海から連絡があったので、間違いなくいる筈。
そう思うと、鼓動が一気に跳ね上がり、胸が苦しい。
そして、その動悸に刺激されるのか、その近くに存在する食道までもが気持ち悪さを訴えてくる。