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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第54章
(き、気持ち悪い……)
匠海との再会への戸惑いよりも気持ち悪さのほうが勝り、ヴィヴィは新鮮な空気を求め、家族に続き早々にリムジンから降りた。
「……はぁ……」
夏真っ盛りなのに24度という日本と比べ涼しい外気温に、ヴィヴィは胸に手を当てほっと息を吐く。
「匠海っ! きゃ~っ! 元気だった? もう貴方って子は、日本帰ってこないんだもの。ほらちゃんとよく顔見せて。ま~、相変わらずのイケメンね!」
母ジュリアンが大声を上げながら、両手で長身の匠海の頭をぐいと自分に引き寄せているのが、ヴィヴィの視界に入った。
「マム……、相変わらず元気だね。おかえり」
母に圧倒された感じの匠海が、そう少し引きながらも笑顔で返している。
ジュリアンにぎゅううとハグされた匠海は、さらにその上から長身の父グレコリーにハグされる。
「た~く~み~っ! 毎日顔を合わせていても、ずっと抱きしめたかったよ!」
父のその言葉に、後ろにいるクリスが「毎日……?」と突っ込むと、
「ああ、ほぼ毎日、テレビで全社重役会議してるから」
と父がヴィヴィにとっては羨ましいネタばらしをする。
「おかえり、クリス。またデカくなったんじゃないか?」
両親の熱烈ハグから解放された匠海が、同じくらいの背になったクリスの頭をガシガシ撫でる。
「なってない……。それに、『おかえり』は、僕達のセリフでしょ……」
クリスがそう呆れたように呟いた言葉の意味を、匠海はすぐに気付いて白い歯を見せて笑う。
「そっか、そうだな。3週間前は悪かったな。帰れなくて」
「……仕事なら、しょうがない……」
そう返したクリスに、匠海が相好を崩して両腕を開く。
「可愛いなあ、お前は! 寂しかったんだな、クリス。ほら、お兄ちゃんの胸においで」
「い、いいよっ それに僕より、ヴィヴィが落ち込んでた……」
クリスは後ずさりながらそう言って、自分の後ろにいたヴィヴィに話を振る。
「えっ」
突然名指しされたヴィヴィは、小さく声を漏らして戸惑う。
(クリスったら、なんてことを……っ)
確かに8月頭に匠海が帰国できなかった時、ヴィヴィはがっくりうな垂れていたが、それを匠海に知らされるなんて恥ずかしすぎる。