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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第55章
ロンドンにある父の実家の屋敷に到着した篠宮一家は、祖父母と一緒にアフタヌーンティーを楽しんだ後、長旅の疲れを取るためそれぞれシャワーを使わせてもらうことにした。
「匠海様、クリス様、ヴィクトリア様のお世話は、このリーヴがさせて頂きます。宜しくお願い致します」
そう自己紹介してきた執事のリーヴは、ブルネット(栗毛)で鼻筋のすっと通った顔立ちの英国人だった。匠海が代表して口を開く。
「宜しく。まあ、ほとんどこの双子の世話だけで手いっぱいになると思うから、俺は適当でいいよ」
「畏まりました。リンクへの送り迎えも私がさせて頂きます」
「「宜しくお願いします」」
双子は声を揃えてリーヴに挨拶した。階段へと案内されながら、リーヴが説明する。
「お嬢様方にはいつも通り、2階のベッドルームをご用意しております。手前から、クリス様、ヴィクトリア様、匠海様となります。既にバスの準備は出来ております。荷物も片づけてありますので、どうぞごゆっくりお寛ぎ下さい」
「ディナー、何時から……?」
クリスがそう尋ねると、リーヴが微笑みながら振り返る。
「18時からです。グレコリー様の兄妹様ご夫婦と、そのお子様方もお越しになります」
「そう、ありがとう」
ヴィヴィはにこりと微笑んで礼を言うと、3人はそれぞれ自分用のベッドルームへと消えていった。
「ふはぁ……」
白い猫足のバスタブに体を沈めたヴィヴィは、少しおじさんの様な声を出しながら息を吐いた。
ずっと寝ていたとはいえ、12時間を超えるフライトと時差で疲れが溜まっていた。
(お兄ちゃん……元気そうで、良かった……)
ヴィヴィは白濁の湯を掌で掬い上げながら、先ほどまで一緒だった匠海の姿を思い浮かべる。
「………………」
少しでも傍に居られればいい。
匠海に今以上、妹である自分のことを女として見てくれというのは、その気のない匠海には酷だろう。
(……まあ、今、ヴィヴィ、6日目だし……出来ないし……)
そんな事を心配する必要など一切ないのに、心の隅でどこか期待している自分がいるのだろう。
「……~~っ」
(ホント、懲りてないっ ヴィヴィの馬鹿っ!)
ヴィヴィは、ばしゃばしゃと音を立てて両手で顔を洗うと、バスタブから出た。