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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第55章
スモーキーピンクの五分袖ワンピースに袖を通し、腰で茶色のリボンを結ぶ。姿見で茶色の糸で刺繍が施された裾等に不備がないか確認すると、ヴィヴィは階下のダイニングへと降りて行った。
ディナーの時間10分前の玄関ホールとリビングには、既に親族が溢れていた。
「お~っ! ヴィヴィっ!! オリンピック金メダリストの凱旋帰国だ!」
父の兄である叔父が、叫ぶようにそう言うと、近寄ってきてヴィヴィは抱き上げられた。
「叔父さん~! 一年ぶり~!」
ヴィヴィはその腕の中で、叔父の頬にキスをする。
「ヴィヴィは相変わらず、ほっそいな~。3年前から体重変わらないんじゃないか?」
毎年こちらに来るたびに何故か持ち上げられているヴィヴィは、
「身長伸びたし、それはないよ~」
と笑いながら突っ込む。
「おめでとう、ヴィヴィ。オリンピック、ずっとテレビで見てたわっ!」
叔母達もそう言ってハグしに来てくれる。
「ちゃんと聞いてくれた~?」
「聞いたわよ! キスアンドクライで『Thank you Mr.&Miss. Owen(オーウェン)!!』って私達の名前、呼んでくれたわ」
皆が喜んで口々にそう返してくれ、ヴィヴィはにっこりと微笑んだ。
「あ、クリス! 早くこっち来て、顔を見せて」
ちょうど階段からクリスが下りて来たところで、皆がその声に振り替える。
何故か階段の中腹で立ち止まったクリスは、片手を上げてまるで王様のように悠然と手を振って見せた。その表情は微妙に少し引きつっている。
「あらまあ、何やってるの? クリス、早く降りてらっしゃい。まぁ~、大きくなったわね!」
「兄さんに似て、ハンサムになったこと!」
「もう匠海の背を、追い抜かしちゃうんじゃない?」
そうきゃあきゃあ騒ぎまくる女性陣の中、クリスは小さく反論する。
「去年と比べ、1センチしか、伸びてない……」
クリスは叔母達に頬を触られキスされまくられ、揉みくちゃ状態だった。
「皆様、ディナーがご用意できました。ダイニングへとお越し下さいませ」
家令のその言葉にやっと女性陣から解放されたクリスが、よろよろとヴィヴィの傍にやってくる。
「く、口紅ついてる……」
そう笑いながらヴィヴィは、クリスの頬に付いた赤い口紅を、ハンカチで拭いてあげた。