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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第55章
広いダイニングテーブルに着いた親族は、祖父の乾杯でディナーをスタートした。母の実家エディンバラの従兄弟は双子と同年代のティーンが多かったが、逆に父の実家ロンドンの従兄弟は、匠海の同世代が多かった。
食前酒を口にしていた従姉のメグが、双子を見比べて口を開く。
「クリス、ヴィヴィ。もちろん、オリンピックの金メダル、持って来てくれたんでしょう?」
「あ……忘れた……」とクリス。
「えぇええ~っ!? 楽しみにしてたのにっ!」
メグのその返事に、親族一同が「そうよ~」「残念だな……」と口々に突っ込まれる。ヴィヴィは慌てて胸の前で両手を振る。
「あ、違うの。荷物には入れたけど、ダイニングに持って降りるのを、忘れただけなの」
「私がお持ちします。お嬢様のは、デスクの上に置かれているケースですよね?」
執事のリーヴがそう申し出てくれて、ヴィヴィは「うん」と頷くと、クリスも同様に、
「僕もデスクの上に置いてるから、一緒に持ってきてくれる?」
「勿論でございます」
そう言って、リーヴはダイニングから出て行った。
「そうそう、貴方達は知らないだろうけれど、ここにも英国の放送局が取材に来てたのよ」
父の妹である叔母が、そう嬉しそうに話し出す。
「へ~」
「双子の結果の出るFPの日に、それぞれね。夕方のニュース番組で流れたのを、皆で集まってみたのよね」
「そう! 叔父さん、緊張しまくって、お祝いコメント噛みまくりだったの」
「あはは、見たかった!」
親族達の楽しそうなその様子に、ヴィヴィは心からそう思う。
「匠海は、9月からオックスフォードのMBAに通うんだよな?」
従兄のヒューが、匠海にそう話を振る。
「Entrepreneurship(企業家精神)専攻プログラムでは米国に次いで、英国随一だ。色々と大変だろうが、頑張れよ~」
父の兄がそう言って、親指を立ててみせる。
「はい。たまにこちらにお邪魔すると思うから、宜しくね、グランパ、グランマ」
「ああ、勿論いつでもおいで! 毎週末ディナーに来てくれると、嬉しいよ。双子もこっちの大学に、進学すればいいのに」
匠海に話しかけられた祖父は心底嬉しそうに匠海に答え、そして残念そうに双子を見返す。