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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第55章          

「しかし、双子も真面目だな~。まあ、それだけ努力してるから、五輪のメダリストになれるのか」

と父の妹の旦那が呟くと、その息子で、従兄のヒューがヴィヴィを見つめて口を開いた。

「ヴィヴィ。俺、病院戻るから、送ってやるよ」

「あら、お酒飲んでないと思ったら、車だったのね」

 ヒューの母がそう言って、医師である息子を見返す。

「うん。ちょっと急変しそうな患者がいてね」

「じゃあ、ヒュー、お願い出来る? すぐに準備してくるから」

 ヴィヴィがそうヒューに尋ねると、「ああ、玄関で待ってる」と返してくれた。 

「ヴィヴィ。帰りはリーヴが迎えに行くって。帰宅時間、電話なさい」

 そのジュリアンの言葉にヴィヴィは頷き、また2日後――篠宮一家がロンドンを経つ前日に、集まってくれるという親族に、別れを告げる。

「じゃあ、行ってくるね」

 ヴィヴィは母の隣の父に軽くハグすると、リーヴに伴われて部屋へと戻り、リンクへ行く準備をした。





「ありがとう、ヒュー。本当なら歩いて20分くらいの距離だし、ランニングしてってもいいくらいなんだけど」

 ヴィヴィは運転している従兄のヒューを見つめ、リンクへ送ってくれる礼を言う。

「ここは日本じゃないからな。女の子一人じゃ、やはり夜は危険だよ。車にしとけ」

 ヒューはそう言って、助手席のヴィヴィの頭をポンと撫でる。彼は匠海よりも年上で、ロンドン市内の病院に勤める外科医だ。双子とは10以上年が離れているが、里帰りするたびによく遊んでもらった覚えがある。

「ヴィヴィ、ボーイフレンドとかいないの?」

「いないよ。作る気もない」

「まさか、スケートが恋人とか言ったり――」

「する」

 ヴィヴィがそう続ければ、ヒューは苦笑する。

「お前達のCM、こっちでも流れてるぞ。ほら、ヨーグルトの――」

「ああ。そういえば……」

 乳製品メーカーMüller社と、CM契約をしていた事を思い出す。

(お兄ちゃんも、目にしたりするのかな……ヴィヴィ達のCM……)

 ヴィヴィはふとそう思い、口を噤んだが、ヒューが話しかけてくる。

「こっちでアイスショーとか、出ないの?」

「あ~……。そだね。いつかやってみたいかも!」

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