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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第55章          

「本当にクリスとヴィヴィは、双子とはいえ、赤ちゃんの頃から仲良しねぇ~」

 祖母が微笑ましいものを見つめる瞳で、双子を見比べる。

「ああ、まだ赤ちゃんなのに、クリスがずっとヴィヴィの手を握り締めてたしねぇ」

 祖父が昔を懐かしむ様にそう言って、祖母を見つめる。

「……覚えてない」とクリス。

「覚えてたら、逆に怖いよ」とヴィヴィ。

 目の前の匠海が、そんな双子を見て笑っていた。

「って事だから……、より一層、一緒に頑張ろうね、ヴィヴィ……」

「はいぃ~……」

 『教育兄』の言葉に逆らえるはずもなく、ヴィヴィは情けない声を上げて眉をハの字にする。素直に従うヴィヴィのおでこに、クリスがチュッとキスを落とす。

「………………」

(あれかな……、クリスって、実はSで。ヴィヴィのこと追いつめて、泣き出しそうな表情見て、心の底では『グへへへへ』とか笑って楽しんでるとか……?)

 斜め上を見上げながら、ブラック・クリスを想像したヴィヴィは、それがあまりにも恐ろしすぎて、ぷるぷると首を振って頭から追い出したのだった。

 その後、日本から持参したヴァイオリンとチェロをお互い練習した双子は、また2時間勉強した。

(なんか……ロンドンに来たのに、リンクしか行ってないし……)

 ヴィヴィが心の中で考えていたことが漏れたかのように、ディナーはロンドン市内の日本料理店へと行くことになった。

「わ~! ロンドン・アイだ。乗ってみたい~!!」

 ディナー後、リムジンの後部座席で、ヴィヴィが遠くに見える観覧車を指さす。透明なカプセルは25名まで乗れる、とても大きな観覧車で、中でパーティーまで出来るらしい。

「僕……やだ……」

 以外にも高所恐怖症のクリスが、ヴィヴィの隣でぼそりと呟く。最近クリスにやり込められてばかりいるヴィヴィが、

「え~、乗ろうよクリス~。乗ろうよぉ~」

と面白がってしつこく誘えば、

「ヴィヴィ……、スケジュール、もっとキツく、して欲しいの……?」

と恐ろしいほどの無表情で見つめ返され、ヴィヴィは「滅相もございませんっ」と口を噤んだのだった。

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