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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第9章          

 1分後――本当はもっと短い時間だったのかもしれない。

 静寂を破ったのは匠海だった。

「なあ、ヴィヴィ……俺、お前に……何か、した……?」

 一つ一つの選ぶように匠海が発した言葉に、はっと顔を上げたヴィヴィは、兄を凝視する。

 己と同じ灰色の瞳には、明らかな困惑が浮かんでいた。

 そして一度目を合わせたら、瞳を逸らさせない強さでもって妹を見下ろしてくる。

 1ヶ月ぶりにまともに匠海と見詰め合ってしまったヴィヴィは、

 途端に跳ね上がった鼓動と混乱した思考で、何を言い返せばいいのか分からず。

「え……な、に……?」

 薄い唇から零れた言葉にもならない音の羅列を聞き、匠海はさらに身を乗り出しヴィヴィに詰め寄る。

「1ヶ月程前から、俺のこと避けてるだろう? 何か気に障るようなことした? 頼むから言ってくれ……ちゃんと謝るから」

「………………っ」

(……お兄、ちゃん……っ)

 心底憔悴した匠海の様子に、細い咽喉がぐうっと詰まった。

 悪いのは匠海ではないのに。

 罪深いことを考え、兄を避ければ全て解決すると逃げている、子供っぽい自分なのに――

 この人は妹である自分との事を、ここまで真剣に考えてくれていたのか。

 嬉しさなのか、哀しさなのか判別出来ぬぐちゃぐちゃの感情が、舌を硬直させ言葉にすることを阻む。

 ヴィヴィに出来る事と言えば、ただ必死に匠海を見つめ返して頭を振る事だけだった。

「言ってくれないと、分からないよ」

 言葉を発しないヴィヴィの頑なに見える態度に痺れを切らしたのか。

 匠海はホルターネックから剥き出しの妹の肩を掴んだ。

 その途端、華奢な身体がびくりと大げさに震え。

 それを掌で感じ取った匠海が、まるで熱いものにでも触れたかのように、咄嗟に両手を離した。

「…………ヴィヴィ?」

 驚きを隠せぬ表情で、匠海がこちらを見つめていた。

(やだ……っ わ、私――っ)

 今までなら何でもなかったスキンシップに、過剰な反応をしてしまうなんて。

 慌てふためいたヴィヴィは、何とかフォローしなければと唇を開き、乾いた笑いを零す。

「あ……あは。お兄ちゃんの手、冷たかったから、ビックリしちゃって……」

「……そうか。悪い……」

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