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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第56章
ロンドン滞在、3日目。
その日も早朝からリンクへと赴いた双子は練習を熟し、昼食後、ライブラリーで勉強をしていた。
「クリス様、ヴィクトリア様。ご主人様がアフタヌーンティーをご一緒にと、申されておりますが」
篠宮兄弟を世話してくれている執事のリーヴが、そう声を掛けてくれたのに、ヴィヴィは、
(地獄に仏……。救世主、現る……!)
とキラキラした瞳でリーヴを見上げた。その隣のクリスが、少し呆れた表情でヴィヴィを見つめていた。
「本日の焼菓子は低カロリーですので、お嬢様でもお召し上がりになれると思いますよ?」
中庭へと案内する道すがら、リーヴがそうヴィヴィに話しかけてくる。黒いお仕着せを纏った彼を見上げ、ヴィヴィはさらに瞳を輝かせて「ありがとう!」と礼を言った。
広い中庭の奥には、祖父母と両親、匠海が既に集まっていた。道すがら、祖母手ずからの美しいイングリッシュガーデンに目を奪われていたヴィヴィだったが、匠海の隣の席を進められた途端、胸の波動が揺らぎ始めた。
『ああ……悪い。クリスと間違えた……』
昨日の匠海の言葉が脳裏をかすめ、焼菓子に心躍っていた気分が一瞬にして冷える。
「今日はダージリンにしたわ。二人とも、好きだったでしょう?」
祖母が瞳を細めて双子を見つめてくる。
「うん、グランマ。相変わらずお庭、素敵ね。あの、くす玉みたいなお花、可愛い」
ヴィヴィが何とか笑顔を作って答える。
「あれはホクシアよ。英国の夏を象徴するお花ね」
後で一緒に散策しましょうね? という祖母の誘いに、ヴィヴィは頬を綻ばせて頷く。
「ヴィヴィもお花、育てたいな~」
目の前でリーヴがついでくれる紅茶を見つめながら、ヴィヴィがぼそりと零すと、
「やめておきなさい」
「同感……」
と、匠海とクリスに速攻で突っ込まれる。
「な、何故に……?」とヴィヴィ。
「「花が可哀想」」
兄弟は阿吽の呼吸でハモって見せた。