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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第56章
「なんだかんだ言って……、仲いいよね、あの兄妹……」
そう言ったクリスの声に、笑みが含まれている。クリスからスマートフォンを受け取ったヴィヴィは、匠海のほうへと近づいていく。
「ね、お兄ちゃんも見て? 真行寺さんの妹の、マドカだよ」
そう言って匠海にスマートフォンを手渡せば、匠海が破顔する。
「お~、もろ今時JK! 真行寺と全然似てないな~」
「マドカ、本当に面白いんだよね、クリス?」
「うん……元気すぎる、けど……」
ヴィヴィの問いに、クリスがそう言って肩を竦める。
「あ、そうだっ!」
ヴィヴィは傍に控えていたリーヴにお願いし、スマートフォンで写真を撮ってもらった。
ピアノの椅子に腰を下した匠海の背後に、双子が回り込んだ3ショット。
『今、英国だよ~。うちのお兄ちゃんです!』
という文と共に、画像をメールする。すると秒速で返信が返ってきた。
画像を開いたヴィヴィが、途端に腹を抱えて笑い出す。
不思議そうにその手からスマートフォンを受け取ったクリスが、それを確認し、ふっと小さく笑うと、匠海へと手渡した。
そこには、
『なんつ~、池様なんだっ!! うちのへたれ兄と取り替えろ~っ o(>_<)o」
という文章とともに、何故か円に後ろから腕で首を絞められている、白目の真行寺が写っていた。
「あははっ! 強烈。真行寺、可哀そすぎる……」
匠海もそう言って爆笑したのだった。
その後2時間勉強した双子は、祖母と一緒に庭を散策した。
そしてそれぞれ正装すると、ダイニングに降りる。
ロンドン滞在最終日となるこの日、再度集まってくれた総勢20名の親族と共に、ディナーを囲んだ。
最終日ということもあり、呑兵衛の両親は、さらに呑んでいた。
(お酒ってそんなに美味しいかな~。ヴィヴィ、真行寺さんちで飲んだけど、ジュースの味しかしなかったし……。でもお兄ちゃんも美味しそうに、ワイン飲んでるな……。お兄ちゃんってホント、何しててもスマートっていうか、絵になるっていうか……。頑張って目を逸らさないと、ずっと見ちゃうっていうか……)
お腹が一杯になってぼ~っとしてきたヴィヴィは、そう他愛もない事を考えながら、2つ斜め前の匠海へと視線を向けていた。