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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第56章
結局その2時間後、目覚ましの音で飛び起きた双子は、それから1時間問題集を泣きながら解き、それぞれのベッドで短い睡眠を取った。
「ふわわ……」
ロンドンの祖父母と別れて、一路、エディンバラの母の生家へと向かう最中、ヴィヴィは両掌で口元を覆い、大きな欠伸をする。隣のクリスもつられて欠伸をしている。
「大丈夫か? オチビちゃん達?」
父グレコリーがそう言って、双子を見比べる。そんな父は、昨日かなりの深酒をしていたようだが、ぴんぴんとしている。母ジュリアンも同様だ。
(その酒呑み遺伝子……。受け継ぎたいような、受け継ぎたくないような……)
ヴィヴィは心の中でそう思いながらも、口を開く。
「ク~リ~ス~がぁ~っ! 寝かせてくれないんだもんっ。もう、本当『鬼兄』だよっ!」
昨日あんなに可愛らしく「クリスには、ちゃんと感謝してる」と言った人物と同一人物とは思えないほど、今日のヴィヴィはクリスに楯突く。
「僕は……スケジュール通りに、と思って……」
そう理由を説明するクリスに、
「だからって、3時に起こして問題、解かさないでぇ~……し、死ぬ……」
ヴィヴィは自分の言い分を突き付け、本当に死にそうな声を上げた。
「クリス……。一応、ヴィヴィはフィギュアの世界女王なんだからね? ……こんなだけど。あまり体を壊すようなことはさせないでね? まあ、クリスに限って、そんなことは絶対ないだろうけれど」
ジュリアンはそう言うと、にっこりと笑って、隣のクリスの頭を撫でなでする。撫でられたクリスも、
「当然だよ、マム……」
と悪びれたところが一切ない。
(一応……っ!? こんなだけど……っ!?)
ヴィヴィは心の中でそう叫び、どうせ、自分よりクリスのほうが信頼度高いんだ……と唇を尖らせた。
その後短いフライトを経て、一行は陸路でエディンバラ郊外の屋敷へと向かう。
そのリムジンの車中、ヴィヴィとクリスは、文字通り爆睡していた。
というのも、双子は屋敷から片道40分かかるリンクに行き練習してから、屋敷へと向かうこととなっていた。
これでもまだ、ましなほうなのだ。昨年は往復3時間も掛けて違うリンクに通っていたのだから。