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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第57章
「新しい水着、買ったんだ~!」
とサラが口火を切れば、
「え~? 何色? もちろんビキニでしょ?」
「えっとね~、黒ビキニだよん!」
「きゃ~っ! サラったら、攻める~」
「新しい彼氏も、悩殺だね!」
とほぼ同年代の他の従姉妹達が、きゃあきゃあと騒ぎ出す。
「彼氏? いいな~」
ヴィヴィが皆を微笑ましそうに見つめながらそう言うと、
「ヴィヴィ、好きな人いないの?」
と話を振られる。
「う~ん。スケートが忙しくて、それどころじゃないかも……。出会いもないし」
苦笑しながらそう答えたヴィヴィに、女性陣はうんうん頷く。
「そうだよね~。男子スケーターって、イケメンでもなんか、ナルシストっぽそうだったり」
「あ~! ちょっと、ゲ○っぽそうだったり、なかなかね~」
と言いたい放題だ。
(クリス……、そうなんだって……)
ヴィヴィは心の中でクリスに対し、ご愁傷様と両手を合わせておく。
「そう言えば、今日のヴィヴィの黒ワンピも新鮮! いつも可愛い色が多かったから」
「ね~、意外と似合ってる。ちょっと大人っぽく見えないこともない」
従姉妹達の感想に、ヴィヴィが、
「見えないこともない……?」
と眉根をぴくぴくとさせて聞き直すが、
「だって、やっぱり童顔なんだもん、ヴィヴィって。メイクも全然しないし」
「あ~、あれじゃない? 日本をはじめとする東洋人って、年よりかなり若く見えるって言うじゃない? ヴィヴィも1/4日本人だし」
「あと、中身はまだまだ『お子ちゃま』だからね~」
毎年の事とはいえ、そうずばすばと『お子ちゃま』呼ばわりされたヴィヴィは、
(もうどうにでもしてくれ……)
と心の中で降参のポーズをとったのだった。
そして、
「ヴィヴィ……お勉強の、時間……」
とクリスが、いつも通り呼びに来る。
「はぁい」
とヴィヴィが席を立とうとするが、その細い肩に手が置かれて止められた。
「お勉強の時間、だけど……。無理、させてない……?」
そう言ってヴィヴィを気遣わしげに覗き込んできたクリスに、ヴィヴィはぽかんとその顔を見返す。
「え……? どうしちゃったの?」
いつもの『教育兄』らしからぬクリスの態度に、ヴィヴィが灰色の目を見開く。