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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第57章          

「どうって……。ヴィヴィの事、大事だから……」

 そのクリスの真摯な答えに、従姉妹達が、

「「「……――っ!?」」」

と一斉に息を飲んで双子を見つめる。

「「ん…………?」」

 いつもとは違う反応を見せる従姉妹達に、双子が声を揃えて振り向くが、3人は無言でぶんぶんと首を振った。

「……? クリス、ヴィヴィは大丈夫だから。勉強しよう?」

「分かった……。疲れたら、すぐ言ってね……?」

 クリスに手を借りて立ち上がったヴィヴィは、何故か目を真ん丸にしている3人の従姉妹に、内心首を傾げながら、

「オヤスミ~! また明日ね?」

と就寝の挨拶をしてサンルームを後にする。

 残された3人の従姉妹達は、

「誰さ? 男子スケーターは、ナルシストって言ったのは?」

「そうよ、どう見ても○イには見えなかったわ……」

「クリス……なんか、かっこ良くなったね~!」

と口々に囁き合い、双子の背を見送ったのだった。

 そしてその双子が、階上の部屋へと戻ろうと階段へと差し掛かった時、大人達がぞろぞろとダイニングから出てきた。

 去年ダニー叔父さんに「酒飲め~!」と絡まれた双子は、「「まずい」」とお互い顔を引き攣らせて、早々に階段を上がっていく。

 しかし焦りすぎたヴィヴィが、階段の段差に履き慣れないヒールの踵を引っ掛け、体勢を崩した。

「きゃ……っ!?」

 ぐらりとその華奢な体が後ろに傾く。

 階段を踏み外しそうになったヴィヴィが、咄嗟に左手で手すりを掴み、体勢を低くしようとしたその時、

「ヴィヴィっ!」

 そう鋭い声と共に駆け上がってきた誰かに、ヴィヴィの体が抱き留められた。 

 左手で手すりを掴み、右腕でその胸の中にヴィヴィを捕えたその人物に、ヴィヴィの鼓動が途端に跳ね上がる。

(……え……?)

「お、兄ちゃん……?」

 ヴィヴィが恐る恐る、その名を呼べば、

「――っ お前は本当の馬鹿かっ!? 何度階段から落ちれば気が済むんだ!」

とぎゅっと腰を抱きしめられたまま怒鳴られる。

 しかし瞬時に、日本語で怒鳴られたことに気づき、ヴィヴィはそれが匠海なりの優しさなのだと気付く。

「ご、ごめんな――」

 弱々しい声でそう謝るヴィヴィを遮り、

「足首、ひねったりしてないか?」

と匠海が、少し抑えた声で尋ねてくる。

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