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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第57章          

「う、うん、多分、大丈夫……」

「多分……?」

「え、えっと、きっと……?」

 おどおどとヴィヴィは言葉を継ぐ。

というのも、驚きでなのか、恐怖でなのか、ヴィヴィの華奢な足は先ほどからがくがくと震えていて、自分でも痛めているのかどうなのか、よく分からなかったのだ。

「馬鹿。そんな返事、信じられるか!」

 匠海はそう怒った声で言うと、ひょいとヴィヴィを横抱きにした。

「え…………?」

「クリス、ヴィヴィの部屋、どこ?」

 腕の中で戸惑いの声を上げるヴィヴィに目もくれず、匠海はそのまま階段を上りながら、上の段に立ち尽くしたクリスに不機嫌そうに聞く。

「あ……、こっち……」

 呆気にとられていたクリスが、正気に戻って匠海を案内する。

 ダイニングの周りには、篠宮兄妹達の一連のやり取りをぽかんと見上げている親族がいたが、匠海はそんなことも目に入っていないかの様に、階上へと消えていった。

 3階のベッドルームへ運び込まれたヴィヴィは、ベッドの端に下ろされ、なぜかその足元に膝を付いた匠海に黒いサンダルを脱がされる。

「これ、痛いか?」

 シースルー素材のクルーソックスの上から、匠海がヴィヴィの足首を掴む。

「う、ううん」

「これは?」

 違う方向に何回か捻られるが、痛くもなんともなかった。

「だ、大丈夫」

「そうか……。悪い、クリス」

 匠海は隣で心配そうな瞳で覗き込んでいるクリスに、視線を移す。

「何……?」

「多分叔父達が、ヴィヴィのこと心配してると思うから、何ともなかったって説明して来てくれるか?」

「分かった……」

 クリスはそう短く答えると、ヴィヴィの頭を軽く撫でてベッドルームから出て行った。

 ぱたんと扉を閉める音がしたと思ったら、匠海がすっと立ち上がり、自分も出て行こうとする。

 それを視線だけで追っていたヴィヴィの胸が、ぐっと詰まる。

(やだ……、お兄ちゃんっ 行っちゃ、やだ……っ!!)

「ま、待って……っ」

 その小さく必死な声に、背を向けた匠海がその場で立ち止まった。

 ヴィヴィはゴクリと息を飲み込むと、言葉を慎重に選んで口にする。

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