パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第10章 　　　　　　　　　　

　日本に帰国した半月後の９月にはシーズンインとなる。

　９月と１０月にグランプリ　ジュニア、１１月半ばには全日本ジュニアが。

　１２月はさらに忙しく、頭にジュニアのグランプリ　ファイナル、クリスマスに全日本選手権が控えていた。

　９月のグランプリジュニア　トルコ大会へ向け、双子は学校とリンクを往復する日々が続いた。

　屋敷には本当に寝に帰るだけ。

（ちょうど、いいや……。忙しくしていれば何も考える時間はないし、夜は泥のように眠れる……）

　今シーズンのヴィヴィの集中力には、いつも鬼のように厳しいジュリアンも、他のコーチ陣も脱帽していた。

　転んでも倒れてもすぐに起き上がり食らいついてくるヴィヴィに、周囲は、

「このままうまく行けば、もしかして――」

と来シーズンのオリンピックへと思いを馳せるようになった。

　フィットネスルームでの体幹トレーニングから戻ってきたヴィヴィは、軽くアップをすると、リンクの中央に立つ。

　今日はＳＰの『剣の舞』を振付けてくれた振付師の宮田に、振付をブラッシュアップしてもらうことになっている。

　激しいティンパニの打音と共に、勢いよく飛び出た弦楽器が。

　目蓋を閉じ足元の氷に長い剣（つるぎ）を突き立てるポーズを取っていたヴィヴィが、

　目を見開き、剣を掲げながら　すっと後ろへと移動する。

　そのままスピードに乗り飛び上がったのは、ステップからの３回転アクセル。

　固くて軽やかな響きを持つシロフォン（木琴）の音に急き立てられトップスピードに乗り、３回転ルッツと３回転トゥループのコンビネーションジャンプ。

　そこで曲調はがらりと変わる。

　サキソフォーンが奏でるどこか魅惑的なフレーズが、先程までの激しい舞との対比を際立たせ。

　頭の位置まで両腕を挙げ、まるで裏合唱とでもいうように目の前で両手の甲を合わせるポーズから、片腕だけ伸ばして妖しげに躍らせる。

　手首の使い方がバレエを彷彿とさせる、ヴィヴィも気に入っている振付。

　その後　元の激しい曲調に戻り、フライングチェンジフットスピンで回数通り回りきると、

　ストレートラインシークエンスで、このオフに頑張ってきたステップを存分に見せつけ、

　３回転フリップ、足替えのコンビネーションスピンを挟み、フィニッシュした。